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嶋中書店 廃業! [Mystery]

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少々、情報に乗り遅れてしまいましたが(^_^;
出版業界唯一の専門誌「新化」Shinbunka ONLINEより記事を抜粋します。

●嶋中書店、会社解散
1月10日付で会社解散の手続きに入った。・・(中略)・・「売上げ悪化により、これ以上続けても立ち行かないため」と理由を説明している。同社書籍の取り扱いなどについては同日付で各取次会社に通知済みという。【1月18日更新】


(゜ペ)ウーン、残念なニュースですね。

嶋中文庫の海外名作ミステリー全集「グレート・ミステリーズ」については、本ブログでも頻繁に取り上げて参りました。
第1期10巻を怒濤の勢いで刊行し、続いて第2期10巻も刊行予定でしたが、結局2冊出しただけで、書籍編集部から、
「13巻以降につきましては、お察しのとおり採算上の問題があり、残念ながら現在刊行を見合わせております。」
というメールを頂いていたので、
「やっぱりな。」
というのが正直な感想です。

「グレート・ミステリーズ」をYuseumが事あるごとにプッシュしてきたのは、「ある希望」があったからですが(後述)、嶋中書店の他のシリーズは存じませんが、この「グレート・ミステリーズ」の刊行は明らかに戦略ミスでした。

このシリーズは、もともと1960-61年に中央公論社から刊行された『世界推理名作全集』(全10巻)がもとになっていて、第1期の作品ラインナップは、この記事この記事この記事、そしてこの記事に書いていますが・・・、
はっきり言って購買意欲の起こらないラインナップ
でした。
作品に魅力がないわけではありません。
他文庫でも容易に入手できる作品を、ただ普通に刊行したのが問題なのです。

ミステリにある程度精通した人たちにとっては、ほとんど既読作品なので、このシリーズはミステリ初心者をターゲットにするための工夫が必要だったのに、それが何もなかった(単に過去の叢書をそのまま文庫化しただけ)のが失敗の原因です。
最初の3冊が一斉に刊行されたとき、某書店で山積みになっていたのを見て、
「一体、誰がこれ買うの?」
と思ったものです。
大型活字になった分、本が分厚くなった(=値段が高くなった)のもマイナス要因でしたね。
また、解説は著名な中島河太郎氏で、それはいいのですが、なにしろ1960年代の解説だから今読むと古いだけでなく、その後の新知見により現在では「誤り」だと指摘されている内容もそのまま掲載されているのも問題。
#3の『僧正殺人事件』における、S・S・ヴァン・ダインに関する解説などは典型的な例です。

Yuseumのホムペにも書いていますが、10年前に刊行された集英社文庫の「世界の名探偵コレクション10」シリーズなどは、初心者に、
「あっ、これ読んでみたいな。」
と思わせるものがありました。
そのおかげで、Yuseumは今のようなミステリ・マニアになったのです(*^_^*)

「グレート・ミステリーズ」第1期の諸作品が、他文庫でもいかに容易に入手可能か、確認してみましょう。
(あと、今後嶋中文庫が絶版になったときの参考までにw)

#1.モルグ街の殺人/まだらの紐

  • モルグ街の殺人、盗まれた手紙(以上ポー)

  •  それぞれ、創元推理文庫の「ポオ小説全集 3」「ポオ小説全集 4」で入手可能。
    (ちなみにYuseumは、ハードカバーですが「ポオ小説全集〈1〉推理小説」を持っています。)


  • 赤毛組合、唇の捩れた男、まだらの紐、グロリア・スコット号事件、マスグレーヴ家の問答書、踊る人形、ノーウッドの建築師、六つのナポレオン、金縁の鼻眼鏡(以上ドイル)

  •  説明不要でしょう。今なら、光文社文庫が手頃かな?
     「シャーロック・ホームズの冒険」(前3作)、「〜の回想」(次2作)、そして「〜の生還」(後4作)で、ここに収録の全9作品が読めます。


    #2.アクロイド殺害事件(クリスティー)
     Yuseumのホムペの感想ページをご参照下さい。
     短編『うぐいす荘事件』が併載されていますが、これも創元推理文庫の「世界短編傑作集 3」で読むことができます。


    #3.僧正殺人事件(S・S・ヴァン・ダイン)
     Yuseumのホムペをご参照下さい。


    #4.神の灯(エラリー・クイーン)
  • 神の灯

  •  創元推理文庫の「エラリー・クイーンの新冒険」に収録。

  • マッド・ティー・パーティー

  •  「世界短編傑作集 4」、あるいは集英社文庫の「世界の名探偵コレクション10〈7〉エラリー・クイーン」で読めます。

  • ひげのある女、首つりアクロバット

  •  いずれも、「エラリー・クイーンの冒険」に収録。


    #5.皇帝の嗅ぎ煙草入れ(カー)
     創元推理文庫『皇帝のかぎ煙草入れ』


    #6.歌う白骨(オースチン・フリーマン)
     創元推理文庫「ソーンダイク博士の事件簿 1」に収録。
     ただし、『オスカー・ブロズキー事件』は「世界短編傑作集 2」に別録なので、<クイーンの定員>#052にも収められている本短編集が1冊で読めるという意味では、この本の意義はあるかな?


    #7.ブラウン神父物語(G・K・チェスタートン)
     8短編が収録されていますが、第1短編集の「ブラウン神父の童心」(創元推理文庫)と、集英社文庫の「世界の名探偵コレクション10〈3〉ブラウン神父」で、ほぼ網羅できます。
     ただ、この2冊だけだと『銅鑼の神』が欠落するので、集英社文庫の代わりに「〜の知恵」(『ペンドラゴン一族の悲劇』も収録)と「〜の不信」(『弦月荘(ムーン・クレセント)の奇跡』収録)の3冊を揃える、という手もあります。


    #8.トレント最後の事件(E・C・ベントリー)
     創元推理文庫、あるいは集英社文庫の『トレント最後の事件―乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10〈5〉』で。
     併録の短編『ほんものの陣羽織』については、ハヤカワ・ポケットミステリ「黄金の十二」か、短編集「トレント乗り出す」で読めます。


    #9.血の収穫(ダシール・ハメット)
  • 血の収穫

  • 創元推理文庫(あるいはハヤカワ・ミステリ文庫『赤い収穫』)で。

  • クッフィニャル島の夜襲、十番目の手がかり、スペイドという男

  • これら「オプ&スペイド3短篇」については、バラバラに収録されていていずれも絶版状態なので、この文庫本に関しては持っていた方がお得でしょう。


    #10.黄色い部屋の謎(ガストン・ルルー)
     Yuseumのホムペをご参照下さい。


    以上、第1期全10巻については、一部を除いて容易に読むことができます。


    むしろ、第2期全10巻のうち刊行された2冊、
    #11.ビロードの爪(E・S・ガードナー)
    は、創元推理文庫は現在品切れ状態だし(この記事[Yuseumの感想]も参照)、


    #12.伯母殺人事件/疑惑
    については、ハルの『伯母殺人事件』は創元推理文庫で読めるし、セイヤーズの短編『疑惑』も「世界短編傑作集 4」で読めます。

    しかし、ピーター・ウィムジィ卿が出てくる短編『アリ・ババの呪文』は、現在では邦訳を読むのはかなり困難なので、この本は貴重です(この記事も参照)。
    (もっとも、創元推理文庫の「ピーター卿の事件簿II 顔のない男」の解説には、 「残りの作品もいずれ『事件簿III』としてまとめられる予定」 と書いているので、もうじき読めるかもしれませんが・・・(?_?)
    ・・・という言葉を信じて、早6年。今年はセイヤーズ没後50年なので、そろそろ出版して欲しいなぁ・・・。)



    話が脱線してしまいました(^^ゞ
    さて、最初に述べたYuseumの「ある希望」。
    それは第II期10巻のラストを飾る、ジョルジュ・シムノンの『男の首』を刊行して欲しかったのです。
    もっとも、『男の首』自体は創元推理文庫で読めます。
    Yuseumの書籍化して欲しかったのは、おそらく併録されるはずだった『サン・フォリアン寺院の首吊り男』なのです!

    この作品に関してはYuseumのホムペにも書いていますが、非常に面白くゾクゾクしながら読んだ記憶があります。
    しかしながら、この作品は現在、グーテンベルク21さんの提供する「電子ブック」という形でしか読めません。50年前に出版された角川文庫版は既に絶版で、復刊することはまずないだろうから、嶋中文庫さんには期待していたのですが・・・、残念です(x_x)

    なお、「グレート・ミステリーズ」で刊行予定だった他作品についても、ほとんどは他文庫で読めますから、それも記しておきます。ご参考まで。
    この記事に点数をつける

    #13.Yの悲劇(エラリー・クイーン)
     Yuseumのホムペをご参照下さい。

    #14.殺意(フランシス・アイルズ)

    殺意

    殺意

    • 作者: 大久保 康雄, フランシス・アイルズ
    • 出版社/メーカー: 東京創元社
    • 発売日: 1971/10
    • メディア: 文庫


    #15.赤い家の秘密(A・A・ミルン)
    [Yuseumの感想]




    #16.赤毛のレドメイン家(E・フィルポッツ)
    [Yuseumの感想]

    赤毛のレドメイン家―乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10〈1〉

    赤毛のレドメイン家―乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10〈1〉

    • 作者: イーデン フィルポッツ
    • 出版社/メーカー: 集英社
    • 発売日: 1999/03
    • メディア: 文庫


    赤毛のレドメイン家

    赤毛のレドメイン家

    • 作者: イーデン・フィルポッツ
    • 出版社/メーカー: 東京創元社
    • 発売日: 1970/10
    • メディア: 文庫


    #17.樽(F・W・クロフツ)

    樽―乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10〈9〉

    樽―乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10〈9〉

    • 作者: F.W. クロフツ
    • 出版社/メーカー: 集英社
    • 発売日: 1999/06
    • メディア: 文庫






    #18.奇厳城(モーリス・ルブラン)
     いろいろありますが、例えば、


    #19.バスカーヴィルの犬(A・C・ドイル)
     これもいろいろありますが、例を挙げると、


    #20.男の首(ジョルジュ・シムノン)

  • 男の首



  • サン・フォリアン寺院の首吊り男

  •  先述したように、Yuseumのホムペをご参照下さい。
     角川文庫の古書ならAmazonマーケットプレイスで入手可能です。

  • 三つのレンブラント

  •  メグレ警視ものではなく、短編集『13の秘密』の1編です。
     これも現在品切れ状態ですが、中古本入手は可能です。

    13の秘密 第1号水門

    13の秘密 第1号水門

    • 作者: ジョルジュ シムノン
    • 出版社/メーカー: 東京創元社
    • 発売日: 1963/08
    • メディア: 文庫



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    コメント 4

    椎名

    私、ミステリーとか、ホラーが大好きなんで、
    眼を光らせてしまう記事でしたvvv
    参考になります♪♪♪
    by 椎名 (2007-02-10 15:29) 

    チヨロギ

    このご時勢ですから、やむを得ないこととは思いますが、やっぱり出版社の廃業には胸が痛みます。
    以前、Yuseumさんにご紹介いただいて初めてブラウン神父を読んだのも、このグレート・ミステリーズでした。
    今日の記事の赤字部分をよーくチェックして、まだ在庫のあるうちにどれを買っておくべきか検討したいと思います。
    いつも充実した情報をありがとうございます!(^.^)
    by チヨロギ (2007-02-10 16:33) 

    ecco

    これまでに呼んだことのある本を含め
    興味深い本がたくさん!
    本格推理小説っていうのが久々読みたくなりました。
    by ecco (2007-02-10 23:09) 

    ゆーじあむ

    >椎名さん、nice!ありがとうございます(*^_^*)
    ここに紹介した本は、海外ミステリの中でも「クラシックの傑作」ばかりですからね♪
    ぜひ、読んでみてください!

    >チヨロギさん、nice!ありがとうございます(#^.^#)
    そうですね。在庫はまだ各本屋にあるようなので、読みたい本があったら、すぐに購入した方がいいでしょう。
    Yuseumも昔、
    「この本、いいなぁ。・・・でも、後日でいいか!」
    などと思っていたら、その本が絶版になって(T.T)
    それ以来、「読みたい!」と思った本は即購入
     →だから、「積ん読本」が多い(^◇^;)

    小さい頃は、出版社って「大きい会社」というイメージがあったけど、齢を重ねるにつれて、出版業界って同族経営の多い「こぢんまり」した世界なんだなぁ、とわかってきました。
    実は「倒産するんじゃないか?」と、Yuseumが心配している出版社があるんですよ。本当に倒産したら困るので、名前は出しませんけど・・・(‥ゞ

    >eccoさん、nice!ありがとうございます\(^O^)/
    これだけの本が<全集>として揃えば、見栄えも壮観でしょ♪
    Yuseumはコレクター的側面もあるので、このシリーズ、第2期の「たった1冊」が欲しいばかりに、今まで他文庫で持っていた作品も含めて、それまで購入する気のなかったこのシリーズを12冊、買っちゃったんですなぁ。
    (あの頃は、お金にも多少余裕があったから(^^ゞ)

    ふう〜(´ヘ`;)
    一部を残して、後は「本の好きな方の妹」にプレゼントしようかなぁ。
    (ちなみに、Yuseumには「本に全く関心のない妹」もいますw)
    by ゆーじあむ (2007-02-11 00:01) 

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