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暗い鏡の中に -Through a Glass, Darkly- [Mystery]

買ってすぐに読みました。
Yuseumにしては、速く読めたと思います。
暗い鏡の中に (創元推理文庫)

暗い鏡の中に (創元推理文庫)

  • 作者: ヘレン・マクロイ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/06/21
  • メディア: 文庫
ブレアトン女子学院に勤めて5週間の女性教師フォスティーナは、突然理由も告げられずに解雇される。彼女への仕打ちに憤慨した同僚ギゼラと、その恋人の精神科医ウィリング博士が調査して明らかになった"原因"は、想像を絶するものであった。博士は困惑しながらも謎の解明に挑むが、その矢先に学院で死者が出てしまう・・・。

いやあ、何とも言えないこの読後感(°0°)
訳者の駒月さん曰く、「霊妙な終わり方」が実にいいです[モバQ]

この長編には、元になる短編があって、英題は同じですが、下の短編集に『鏡もて見るごとく』という名で収録されています。
歌うダイアモンド (晶文社ミステリ)

歌うダイアモンド (晶文社ミステリ)

  • 作者: ヘレン マクロイ
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 2003/01/01
  • メディア: 単行本
そもそも、"Through a Glass, Darkly"という言葉は聖書から取られたもので、キリスト教徒ならすぐにピンと来る有名な一説のようです。
(その辺は本棚の中の骸骨の中のコラム「鏡の中におぼろに」に詳しく書かれています。)

まあ、この作品は長らく絶版だったとはいえ、結構有名な作品なので、ネット等で調べると上のあらすじにある"原因"がすぐに分かっちゃうのですが[あせあせ(飛び散る汗)]、このブログは一応ネタバレはしない建前(でも、ネタバレしてしまうかも。。。注意ね[ふらふら]なので、ある「オカルト現象」としておきましょう。

短編と長編の大雑把な違いは次の通りです。
.短編にはギゼラが出てこない。
2.短編では女学院内での死者、つまり「第1の事件」は出てこない。
3.「第2の事件」(短編では、これが最初の事件に相当)で用いられるトリックが、短編では「そのものズバリ」な物[ぴかぴか(新しい)]を利用しているのに対し、長編では「それらしき効果を発揮しそう」な物と考えられている。
4.「第2の事件」について、短編では犯人と目される人物にアリバイが用意されているが、長編ではアリバイがない[人影]
5.ベイジルが示した「犯人」について、短編ではほぼ自供したような形になっているのに対し、長編では「犯人」は自説を繰り広げて、犯行を認めない。

1.は重要です。
だって、ギゼラが出てこないと、ベイジルの唐突のプロポーズ[黒ハート]が見られないからw
ま、それはともかく、アメリカ育ちのためか現代科学に絶対の信頼を置いているベイジル・ウィリング博士と、文明の革命を幾度も経験しているヨーロッパ育ちのため、科学で説明できないオカルト的な事象にも寛容なギゼラの、一連の事件に対する捉え方の違いは物語に深みを与えています。

そして、これら1〜5の違いにより、短編の『鏡もて見るごとく』は本格推理小説として完結しているのに対し、長編の『暗い鏡の中に』は霊妙なエンディングを迎えることになるのです。

『暗い鏡の中に』の終盤、ベイジルは「犯人と思われる人物」と対峙し、実に科学的に明快な推理を披露します。
ただ、証拠はやや薄弱です。
それに、もしこれら一連の事件を犯人が計画的に成し遂げたとしたら、犯人のその凄まじい執念に恐怖を抱くと同時に、「そこまで人間は執念深くできないのでは・・・」と懐疑的にもなりそうです。

一方、犯人と目される人物は、最初の「悪戯」は認めます。
しかし、それ以外には自分は全く関係していないし、自分にもよく分からないと言い放ちます。
ただ、先に挙げた「オカルト現象」を認めてしまえば、事件は完全に納得です。
認めれば、の話ですが。。。

先に挙げた3.について、「第2の事件」で用いられたトリックが「そのものズバリ」な物[ぴかぴか(新しい)]でなく、「それらしき効果を発揮しそう」な物であるのは、その方が物を片付けやすいからだと思います。
つまり、証拠として残りにくい。
また、4.にあるように、長編では犯人にアリバイがないのは当然のことです。
なにしろ、長編では「第2の事件」直後に「犯人らしき人物」をギゼラが目撃するのだから。
しかし、ギゼラは「それ」を犯人とは同定できない。オカルト現象かもしれない。。。
ここで、犯人と目された人物が明確なアリバイを用意していたとすればかえって露骨になるところ、アリバイを用意していないのは狡猾だとベイジルも犯人に言っています。

「第2の事件」については、いくつか細かい推理もベイジルはしているので、例えば被害者の常備していた薬の中身を調べるとか、科学的捜査の突破口はなくはないと思いますが、それを「第2の事件」に直結させるのは極めて難しい。
そこで、ベイジルは「第1の事件」で犯人を立件しようと試みますが、これも難しい。
目撃者がいなくはないのですが、その信憑性が低いということで「事故」扱いになってしまっています。
名門女学院の中で起こった事故、他殺の可能性が極めて低いと考えられているような事件を、今さら掘り下げようとは学院のライトフット校長は決して許可しないでしょう。

かくして、ベイジルは犯行を証明することはできないものの、せめて今ここで真相を自白することで、今後の人生において苛まれることもないのでは、と勧めますが、「犯人」はやっぱり信じてもらえないのだと一歩も引き下がらない。
そして、「犯人」は最後に笑いながらこう言います。
「あそこになにがあるのかは、神様しか知らないんだ!」

果たして、この事件はベイジルの推理するように執念深い残虐非道な事件だったのでしょうか?
それとも、現代科学では証明できないオカルト現象が引き起こした事件なのでしょうか?

こういう作品は、他にもあります。
有名なところは、この作品(ネタバレはしていないと思うけれど、クリック注意!)
・・・って、品切れじゃん┐(´д`)┌ヤレヤレ


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チヨロギ

「霊妙なエンディング」って、なんだろー?
気になる気になるぅ~☆
で、さっそくポチりましたv( ̄ー ̄)
by チヨロギ (2011-07-02 11:31) 

やまだ

こんにちは (^^)

なんとか、治まりました。
お見舞いのコメント、ありがとうございました。

by やまだ (2011-07-03 17:36) 

Yuseum

>チヨロギさん、ポチリましたか(^^)
是非、暑い夏に読んでみてください。

>やまださん、腰の痛み治まってよかったです\(^O^)/
by Yuseum (2011-07-09 15:23) 

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