お知らせ
このブログ記事は、2018年10月19日に私のメインブログ「レストカフェ-ゆーじあむ」に掲載した記事をこちらのブログへ移し、補筆改訂したものです。
本書並びに参考図書のネタバレに直結する部分は、2018年11月27日に削除しました。



構想15年、ミステリ界のトップ・ランナーによる圧倒的な傑作登場!
(下巻オビより抜粋)




近年これほど「ここは原文では一体どうなっているのかを確認したい」と思ったミステリも珍しい。—— 千街晶之氏
いや、すでに評判なので、これ以上、語るまでもないでしょう。—— 吉野仁氏
二面性があって、かつ、最後で壮麗にまとまってくれるミステリ、待ってました。—— 酒井貞道氏


書評七福神の九月度ベスト!翻訳ミステリー大賞シンジケート



注意ポイント
このブログ記事では、皆さんが、
アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』Magpie Murders
上巻を既に読んでいるという前提で書いています。(上巻のネタバレはしていませんが、下巻の登場人物について少し触れています。)
まだ、本書を読んでいないけれどこの作品に興味のある方は、拙ブログ記事
【ネタバレなし】この本はあなたの人生を変える? ー『カササギ殺人事件(上)』
に、作者アンソニー・ホロヴィッツに関することや上巻のあらましを記していますので、そちらもご参照ください。


ゲームデザイナーの小島秀夫氏もTwitter
「全てのクリスティファン、本格推理ファンは読むべし!ミステリー好きで良かった思わせてくれる究極の逸品!」
と大絶賛で、日本語&英語の両方でツイートされており、それに対して作者のホロヴィッツさんが感謝のリプライ。


だから、「本書を未読の方は(こんなブログを読む前に)とにかく読んでみてください。」という結論…ではありますが、それでは(私的に)味気ないので蛇足ながら、このブログ記事ではトリビア付きの私の感想(ネタバレは基本的に含みません)を補足しようと思います。
(なお、このブログ記事で「本書」、「上巻」、「下巻」と記した場合は、アンソニー・ホロヴィッツ作『カササギ殺人事件』のことを指し、単に『カササギ殺人事件』と書いた場合は、作中作(ないしは小説内小説)のアラン・コンウェイ作『カササギ殺人事件』を指します。)





カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)



  • 作者: アンソニー・ホロヴィッツ

  • 出版社/メーカー: 東京創元社

  • 発売日: 2018/09/28

  • メディア: 文庫








カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)



  • 作者: アンソニー・ホロヴィッツ

  • 出版社/メーカー: 東京創元社

  • 発売日: 2018/09/28

  • メディア: 文庫






カササギ殺人事件(下)のトリビア付き感想


その前にもう1つだけ


上巻の最後が衝撃的な一文で終わり、さて下巻。
「登場人物」一覧、本扉の後、



こんなに腹立たしいことってある?



の一文で始まるのですが、ここに至ってようやく上巻の冒頭に出てきた「わたし」が≪クローヴァーリーフ・ブックス≫文芸部門の編集者であるスーザン・ライランドということが分かります。


スーザンがミステリ作家としてのアラン・コンウェイを見出した成り行きを語るシーンがあるのですが、そこでのスーザンのこんな言葉、



わたしはアガサ・クリスティを読んで育ち、飛行機に乗るとき、あるいは海岸でくつろぐとき、何よりミステリを読みたいと思うたぐいの人間だ。テレビドラマの『名探偵ポワロ』や『バーナビー警部』も、見のがした回などひとつもない。(下巻P.37)



思い当たる方もたくさんいるのではないでしょうか。ミステリ好きにはワクワクしてきますね。


また、古き良き時代の英国ミステリだった上巻に比べて、下巻では「iPhone」や「iPad」、「(カー)ナビ」、「Eメール」なども登場し、話もより現代的になってテンポが良くなる一方、作者の遊び心が表れている章もあります。


注意ポイント(再)
これ以降は、本書のたくさんあるトリビアの中から六つのトリビアについて触れます。
ネタバレは基本的に避けたつもりですが、類推できるかもしれないので、未読の方はご注意ください。

(本書の核心に触れるネタバレは削除しました。)


『ねずみとり』の権利を祖母から譲られた「作家の孫」登場!


この本を読んでいた私にとって、下巻前半のハイライトはここでした。
会員制クラブ≪アイヴィー・クラブ (The Club at The Ivy)≫のウェイターに話を聞いたスーザンは、マシュー・プリチャードその人がその場にいたのを突き止めます!


…知る人ぞ知る、アガサ・クリスティのお孫さんです。実在の人物です。これまで、実在の人物の名前が出てくることはありましたが、まさかご本人が登場するとは思わず、ビックリしてしまいました。


マシュー・プリチャードさんは、クリスティ自身が立ち上げた自分の著作物を管理する「アガサ・クリスティ社(アガサ・クリスティ・リミテッド)」の理事長/会長も務めたことがあり、現在はお子さん(クリスティのひ孫)にその職を譲っているようですが、彼がビジネスの手腕を発揮していなければ、今日に至るまでクリスティの作品が世界中の人々に読まれ、映像化作品も数多く作られたりするようなことは(あるいは)なかったかも…と個人的には思っています。


本書によれば、≪アガサ・クリスティ・リミテッド≫の事務所は≪アイヴィー・クラブ≫から歩いてすぐ、(コヴェント・ガーデン地区の東の境界を成す)ドルリー・レーンにあります。
また、マシューさんが9歳の時に祖母から権利を譲られた戯曲『ねずみとり』が上演されたアンバサダー劇場(The Ambassadors Theatre)、そしてそれを引き継いだセント・マーティンズ劇場は、どちらも≪アイヴィー・クラブ(The Club at The Ivy)≫のある通りのちょっと先にあります。



本書のマシューさん曰く、



コンウェイの本には、祖母の本から借りたあれこれがちりばめてあったからな。人名。地名。まるで、ゲームをしているような気分になったよ。あのシリーズを読んでいると、そこらじゅうに見おぼえのあるあれこれが埋め込んであってね。(下巻P.134~P.135)



『カササギ殺人事件』については、その一部がこの後に記されています。それを読む前に、あらためて上巻を読み返すのも一興かもしれません。