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「あざと可愛さ」だけではない城塚翡翠の魅力;『invert II 覗き窓の死角』 [Mystery]

反転、再び。

霊媒探偵:城塚翡翠が活躍する人気シリーズ第3弾『invert Ⅱ 覗き窓の死角』を読みました[本]

invert II 覗き窓の死角 城塚翡翠

invert II 覗き窓の死角 城塚翡翠

  • 作者: 相沢沙呼
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/09/13
  • メディア: Kindle版
Get it on Apple Books
ーーーーー
まず始めに。
本作では、シリーズ第一作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』の結末に触れています。
まだこちらを読んでいない方は回れ右して、[メディウム]から読まれることをお薦めします(・・)(。。)
(文庫化されています。)
medium 霊媒探偵城塚翡翠 (講談社文庫)

medium 霊媒探偵城塚翡翠 (講談社文庫)

  • 作者: 相沢 沙呼
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/09/15
  • メディア: 文庫
  • Get it on Apple Books
オーディオブックもあります。

また、[メディウム]は清原果耶さん主演でドラマ化されますね。(後述)

それでは、[インヴァート2]。

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人気シリーズ第3弾『殺しへのライン』はオマージュに満ちた本格〈観光〉ミステリ [Mystery]

アンソニー・ホロヴィッツが贈る『その裁きは死』(拙ブログでも紹介)に続く、〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズの第3弾。

殺しへのライン ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)

殺しへのライン ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/09/12
  • メディア: Kindle版
Get it on Apple Books


今回の舞台は、シリーズ第1弾『メインテーマは殺人』の刊行まであと3カ月、本のプロモーションとして文芸フェスに参加するため、探偵ダニエル・ホーソーンとわたし、アンソニー・ホロヴィッツが、チャンネル諸島のオルダニー島を訪れます。

アガサ・クリスティーの中後期作品を彷彿とさせるような感じで、事件発生までの人間模様が詳細に描かれ、フェス関係者の間に不穏な雰囲気が漂うなか、そのうちのひとりが死体で発見されます。
しかも、その被害者は椅子に手足をテープで固定されていたのですが、なぜか「右手だけは拘束されずに自由になっていた」のでした…。

この謎の真相については、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ物語の「あの作品」を想起させます
(クリスティーばかりでなくホームズ物語にも造詣の深い、作家ホロヴィッツさんのことだから、たぶん「あの作品」を意識されて書かれたものと推測しますが…。)

犯人については、(後から考えれば)分かりやすいと言えば分かりやすいですが、私が犯人候補の一人に挙げていたある人物が、最終章で完全否定されていて、思わず苦笑い(笑´∀`)
物語のわたし、ホロヴィッツはホーソーンに翻弄されていますが、読者の私は作家ホロヴィッツさんの手のひらで踊らされていました[あせあせ(飛び散る汗)]

前作でも(確か)少し触れられていた、ホーソーンと因縁のある人物が登場したりして、ホーソーンにまつわる「謎」についても興味深い一冊
シリーズ最新作"The Twist of a Knife"が2023年に刊行予定ということで、こちらも楽しみです。


(お知らせ)

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ナイオ・マーシュ『オールド・アンの囁き』;"正義の天秤"は『裁きの鱗』 [Mystery]

14年ぶりの翻訳刊行、ナイオ・マーシュ[exclamation×2]


オールド・アンの囁き (論創海外ミステリ 266)

オールド・アンの囁き (論創海外ミステリ 266)

  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2021/05/25
  • メディア: 単行本


アガサ・クリスティー、ドロシー・L・セイヤーズ、マージェリー・アリンガムとともに、イギリス四大女性作家、いわゆる〈ビッグ4〉(注1)のひとりに数えられているナイオ・マーシュ
しかしながら、日本での位置づけはというと、(クリスティーは別格として、)最近品切れが目立つようになったとは言え、ピーター卿シリーズの長編が創元推理文庫ですべて刊行されたセイヤーズ、まだまだ日本未紹介の作品もあるとはいえ、2010年代にキャンピオン氏の日本独自短編集が編まれ、12年待った代表作が刊行されたアリンガムに比べると、翻訳に恵まれているとは言えません
2006年にはマーシュの"Death and the Dancing Footman"が論創社さんから出る……と予告されていましたが、ペンディングになったようで(ノД`)(注2)


で、『オールド・アンの囁き』がこの5月に論創社さんから出たわけですが。。。
実は、これに先立つこと4月、自費出版をサポートする風詠社さんから、ナイオ・マーシュの『裁きの鱗』というタイトルの本が刊行されたのです。
どちらも原題は"Scales of Justice"
つまり、同じ作品の翻訳が相次いで出版されたのです。
クラシック・ミステリ玉手箱のストラングル・成田さんは、この現象を「コマドリ姉妹現象?」と命名されていますが(注3)



残念ながら、『裁きの鱗』の方は2021年6月現在、購入できません。(注4)
※参考)2022年6月現在、Amazon等で購入できるかもしれません。


裁きの鱗

裁きの鱗

  • 出版社/メーカー: 風詠社
  • 発売日: 2021/04/07
  • メディア: 単行本

私の場合、
「両方買うのはなあ(´ε`;)ウーン…」
と思っていたら、『裁きの鱗』が品切れになったので、論創社の『オールド・アンの囁き』"Scales of Justice"を読みました。


さて。
この原題"Scales of Jutice"というのは、「正義の天秤」、すなわち、正義の女神が持つ天秤[天秤座]を指すのですが(日本の最高裁判所などにも「正義の女神」像があり、司法の公正さを表す象徴となっていますよね)、実は本書のScalesには二重の意味が含まれています。
『オールド・アンの囁き』の翻訳者である金井美子さんは「訳者あとがき」にて、

気になるかたは作品読了後に、辞書を引いてみていただければ

と記されていましたが、、、
……ここまでお読みになった方はお分かりですよね[ドコモポイント]


四つの旧家が住む、スウェヴニングズという美しい村。村の名士のハロルド・ラックランダー卿がカータレット大佐に自叙伝の原稿を託し、「ヴィク」という謎の言葉を残して病死する。数日後、大佐が頭を殴られて殺され、そのかたわらには地元の釣り人のあこがれである巨大魚、オールド・アンの死体も転がっていた。


「オールド・アン」とは魚のマスのことですね。
最初、登場人物と地名(と猫の名前[猫]ミャー)がウワァーっと出てきて、混乱しそうになるのですが、冒頭に記載のある「主要登場人物」とも照らし合わせながら読んでいけば、丁寧に人物や地名描写がなされているので、わりとすんなり頭に入ってきます


事件が起こってからは、いよいよロンドン警視庁犯罪捜査課の主任警部、ロデリック・アレンが登場。
彼はイギリス上流社会の血を引く高貴な生まれで、オックスフォード大学の卒業生、当初は外交官としての道を歩んでいたという経歴の持ち主。
(その時の縁もあって、サー・ハロルドの妻であるラックランダー夫人から今回の事件捜査に指名されます。)


アレンの捜査方法は「散らばった証拠を拾い集め、全てのものを並べてみて、犯罪の型を決める」というオーソドックスなもの。(Aga-search.comより
部下のフォックス警部らとともに、現地の警察と合流したアレンは、今回の事件もその捜査方法に従っているようです。
サー・ハロルドが残した回顧録に記された「ある事件」について、事件関係者の誰もが口をつぐむ中、アレンは地道な捜査を続け、死んだ大佐その人とオールド・アンが示唆する意外な手がかりから、ついには謎を解き明かします。
決して派手な作品ではありませんが、地方の小さな村で起こった、多彩な登場人物が織りなす事件英国の古典推理小説が好きな方なら、きっと楽しめることでしょう。


この『オールド・アンの囁き』は、1955年度の英国推理作家協会(CWA)シルヴァー・タガー賞作品、とオビには記されています。
ただ、1955年当時の授賞は大賞のゴールド・タガー賞のみで、現在のように副賞にあたるシルヴァー・タガー賞は設けられておらず、『オールド・アンの囁き』はその年の次点でした。(最終候補4作の中には残ったが、大賞は逃した。)
なお、マーシュは1957年にも、『道化の死』で英国推理作家協会賞の次点に選ばれます。
この時期は、マーシュが作家として脂の乗り切った時期と言えるのかもしれません。

「私の感想」『道化の死』(ナイオ・マーシュ)読了!|ミステリ通信「みすみす」blog


『オールド・アンの囁き』は映像化されていて、英国ではDVDも発売されていますが、日本では未発売。
(先ほどの『道化の死』「私の感想」リンクに、DVD-BOXも掲載しています。Set 2にScales of Justiceが収録[CD]

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あの『カササギ殺人事件』の続編;『ヨルガオ殺人事件(上・下)』 [Mystery]

アンソニー・ホロヴィッツさんの『カササギ殺人事件』については、このブログでも紹介してきました。



あれから3年。
満を持して、その続編が翻訳出版されました[exclamation]


ヨルガオ殺人事件 上 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)

ヨルガオ殺人事件 上 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/09/13
  • メディア: Kindle版
Get it on Apple Books

『ヨルガオ殺人事件』Moonflower Murders は、『カササギ殺人事件』から2年後の2016年が舞台。
……だから、『カササギ殺人事件』が未読の方は、まずそちらから読んだ方がよいでしょう。
ギリシャのクレタ島で暮らす元編集者のわたしを、英国から裕福な夫妻が訪れてくる。
彼らのホテルで8年前に起きた殺人の真相を、ある本で見つけた——そう連絡してきた直後に夫妻の娘が失踪したという。
その本とは、わたしが編集した名探偵〈アティカス・ピュント〉シリーズ第3作目の『愚行の代償』……。
というわけで、イギリスで起きた8年前の殺人の真相を解決するために、わたしはその事件と、そして『愚行の代償』を書いたアラン・コンウェイの足跡を探っていきます。
そこまでが、『ヨルガオ殺人事件』上巻の300ページくらい。
そして、わたしは『愚行の代償』を再読し始め、『ヨルガオ殺人事件』の読者も作中作である『愚行の代償』を読むことになります。

『愚行の代償』の舞台は1953年の村、事件は一世を風靡した女優の殺人です。
はたして、この事件の真相は[exclamation&question]
そして、ストーリーは『ヨルガオ殺人事件』下巻に続くのですが、はたしてこの『愚行の代償』を読むことで、8年前の殺人事件の真相、さらには、失踪した娘についても手がかりは得られるのでしょうか[exclamation&question]

というわけで、『ヨルガオ殺人事件』の読者は謎解きが二度も味わえるのです[わーい(嬉しい顔)]
登場人物も二倍に増えるので、上巻はなかなか読むスピードが速くならなかったのですが[ふらふら]
作中作の『愚行の代償』の犯人は、(その動機はともかく、)何となく分かると思います[手(チョキ)]
一方、「現実」の事件の方は、物語の終盤になってもなかなか解決の糸口が見えなかったのですが……。
ポイントは、
失踪した娘は『愚行の代償』を読んで、何を見つけたのか。
これが極めてシンプルなために、そのインパクトも大きく、そこからは謎解きのカタルシスを味わえます[るんるん]

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黄昏時は謎解きの始まり;『木曜殺人クラブ』 [Mystery]

今年の始めに、東京創元社さんがあの『カササギ殺人事件』の続編を強烈プッシュしていたころ。
早川書房さんは、
「そのアンソニー・ホロヴィッツ新作をはるかに凌ぐ異例のスピードで100万部を突破した作品が、2020年の英国にはあって、それを刊行するよ(`・ω・´)!」
……と、東京創元社さんに【宣戦布告】したかどうかはさておきw、私はその作品にも興味を抱きました。
それが、リチャード・オスマンの『木曜殺人クラブ』
これが小説家デビュー作のようです。
最近の、早川書房さんのnoteにもその旨が記されています。



木曜殺人クラブ (ハヤカワ・ミステリ)

木曜殺人クラブ (ハヤカワ・ミステリ)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2021/09/02
  • メディア: Kindle版
Get it on Apple Books
ハヤカワ・ミステリとあるように、本書はいわゆるポケミスながら「特別装幀」なので(ビニールカバーではない)ブックカバーがついてます。

タイトルからは、アガサ・クリスティーの 『火曜クラブ』(創元推理文庫では 『ミス・マープルと13の謎【新訳版】』 )が想起されます。
帯に、「人生最後のミステリをあなたに」とあるように、本書の舞台は“イギリス初の高級リタイアメント・ビレッジ”を謳い文句にする、クーパーズ・チェイスという高齢者施設。
そこに〈木曜殺人クラブ〉と呼ばれる、未解決事件の調査を趣味とする老人グループがあったのですが、施設の経営者の一人が何者かに殺されたのをきっかけに、本物の殺人事件の捜査を行うチャンスがやってくる。

……というようなあらすじですが、全体的にテンポはゆっくりとしていて、ユーモアを交えながら話が進行していきます。
最近のトレンドもどんどん出てくることもあってか、翻訳は読みやすいです。

真相は……、ほろ苦いですね。悲しくなってきます(ノД`)
それでも、人生の黄昏時を迎えたメンバーが、前向きに明るく力強く生きようとする姿が感じられて、勇気づけられました。
ただ、この真相は読者が推理するにはかなり困難なような気が[あせあせ(飛び散る汗)]
一応、物語の前半に張られた伏線が終盤に回収されて(!o!)オオ!となる部分はありましたが[ひらめき]

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