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月館の殺人 〜「鉄道の日」にちなんで再アップw [Mystery]

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2007/10/14追記

D51運転席を再現、鉄道博物館が14日開館…さいたま市 http://www.so-net.ne.jp/news/cgi-bin/article.cgi?gid=soc&aid=20071010i505

なんでも、今日は「鉄道の日」だそうで。
そこで、下に記した「テツ」なミステリ・コミックでも、読んでみてはいかが■D\(^^



久々にミステリの話題。
とはいっても、今日はいつものYuseumのテリトリーから離れて、下のコミックを紹介します。(ネタバレはありません。)

月館の殺人 上  IKKI COMICS

月館の殺人 上 IKKI COMICS

  • 作者: 佐々木 倫子, 綾辻 行人
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2005/08/10
  • メディア: コミック


月館の殺人 (下)

月館の殺人 (下)

  • 作者: 佐々木 倫子, 綾辻 行人
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2006/07/28
  • メディア: コミック


原作は綾辻行人さん。(なお、「つじ」の漢字のしんにょうは、正確には点が2つ。)
『十角館の殺人』『暗黒館の殺人』『びっくり館の殺人』など、<館>シリーズで有名な新本格派ミステリーの旗手ですね。(ただし、本作は「つきだて」と読みます。これがくせ者(--;))
この漫画のためのオリジナル原作です。

漫画は佐々木倫子さん。こちらは、『動物のお医者さん』『おたんこナース』『Heaven?』などで人気の漫画家さん。
早速余談ですが、『動物のお医者さん』は「何か面白いものない?」と妹に尋ねたとき薦められたもので、その時は「え〜、少女漫画?!」と敬遠していたのですが、読み出すとこれが面白い面白い!
のほほ〜んとした独特の世界を創造する漫画家さんですね。

そんな(ある意味ミス・マッチとも思われる)2人による「鉄道ミステリ」ならぬ「テツ道ミステリ」漫画が本作です。
「テツ」とは、鉄道マニア(おたく)のことを指します。
この作品は鉄道マニアでなくても十分楽しめますが、佐々木さんの漫画が好きで、なおかつミステリーもそこそこ好きという方には大変面白く読めると思います。(どちらかだと、ちょっと辛いかも。)

本作は母の厳しい教育により、電車に乗ったことのない沖縄の女子高生、雁ヶ谷空海(かりがや そらみ)が主人公。なんと、飛行機も「ゆいレール」(沖縄のモノレール)にも乗ったことがありません。
そんな、「ありえない」主人公ですが、母が亡くなり途方に暮れていた空海のもとに弁護士さんが現れ、北海道にいる母方のお祖父さま(どうも、高名な方)に会ってくれ、と言われます。そこで、空海は北海道に行き、稚瀬布(ちせっぷ)発、月館行の幻夜号に乗り込みます。

上巻は、佐々木ワールド全開です。
列車(電車ではない)の中には、空海の他に6人の「テツ」さんが同乗しており、その方々のマニアぶりには読者もひいてしまいそうになるのですが、幸い空海が全く鉄道音痴な「のほほん」とした性格のため、楽しんで読むことができます。
あまりの楽しさに、「これってミステリ?」と思うほど。
物語の中盤頃にやっと列車内で事件が発生し、上巻の最後に「なんじゃ、こりゃ?」の絵を見せられて、下巻に続きます。

そして、先日発売された下巻。
ここからは綾辻ワールド全開です。綾辻さんに鉄道ミステリは似つかわしくないなぁ、と思ったのですが、ここで読者は、これは「テツ道ミステリ」であって、まさに綾辻さんの作品であることを認識します。
そして、ここで空海の「ありえない」設定が生きてくるんですね。うーん、凄い.。ooO(゜ペ/)/
次々と事件が起こり、「犯人は誰か?」ということになりますが、綾辻さんと佐々木さんの持ち味が十分に発揮されており、読者はますます事件に引き込まれます。
そして、解決編。このコミックではご丁寧に、解決編の部分はグレーの紙に書かれているので、パラパラとめくったらいきなり事件の核心部分を見てしまった、などという凡ミスも防げそうです。

ミステリとして興味深かったのは、この作品には「壊れた腕時計」というのが出てきて、それから登場人物たちは被害者の殺害時刻を推定します。
しかしながら、ミステリの世界では「壊れた腕時計」=「被害者殺害時刻」ではない、というのはもはや常識なので、これにどういう説明がつけられるのか興味津々で読んでいました。
そして、漫画の持つ特性が十分生かされた「伏線」がちゃんと張られていたことに、感心しました。

あと、列車内の「ほぼ密室トリック」は極めて古典的なトリックが使われているのですが、登場人物の一人が冷静にそれを分析しているのが面白かったです。

結論として、この作品は非常に楽しく一気に読めました。ぜひ、皆さんにお薦めします!
始め、「佐々木さんにミステリはミスマッチでは?」と思ったのですが、どうしてどうして、殺人シーンなんか上手く描いていますね。佐々木さんはホラーを描いても面白いのでは、と思ってしまいました。のほほんとした世界の中に現れる恐怖、というのを上手に描写できるんじゃ、ないかと。

最後に、目次を見ると「原作者あとがき」とありますが、後ろのページを見ると「おや? ない・・・。」
始め落丁かと思ったのですが、、、これが最大の「びっくり」かもしれません( ・_・;)
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※)「てつ」ならぬ「ミス」なYuseumのこだわり
この作品のキャラクターの中で、バーテンダーの唐津さんがYuseumのお気に入りなのですが、上巻のp.98に描かれた唐津さんの趣味=ミステリ本の背表紙の数々には、おそらくミステリ通の方には唸るものがあるでしょう。

一つ一つ、右から順に紹介していくと、
『黒いトランク』鮎川 哲也
『人形はなぜ殺される』高木 彬光
前者は巨匠・鮎川哲也の名作。
後者は最近新装版も出版された、名探偵 神津恭介の活躍する探偵譚。
どちらも傑作ですが、Yuseumは読んでません(;^_^A アセアセ…
(だって、Yuseumのテリトリーは「海外古典ミステリ」だから、なかなかここまで手が回らないのが現実で・・・)

『そして誰もいなくなった』アガサ・クリスティー
『読者よ欺かるるなかれ』カーター・ディクソン
前者は言わずと知れたクリスティーの傑作。(Yuseumの感想)
後者はカーター・ディクソン(=ディクソン・カー)の佳作です。Yuseumのような、カーが少し苦手な方にも読みやすいH・M卿の一編。
どちらも文庫本ではなく、ポケミスが描かれているあたり、マニアの心をくすぐります(^u^)
また、何となくこの2つの作品から、綾辻さんからのメッセージを感じるのは気のせいかな?
ちなみに、文庫版はこちら(『そして誰もいなくなった』)こちら(『読者よ欺かるるなかれ』)

『ケンネル殺人事件』ヴァン・ダイン
『Xの悲劇』エラリー・クイーン
前者は探偵ファイロ・ヴァンスものの佳作。(なぜに、この作品?)
後者はエラリー・クイーンの最高傑作の一つ。本作にも描かれていますが、電車ものでもあります。(Yuseumの感想)
おそらく、どちらとも創元推理文庫。

『ホッグ連続殺人』ウィリアム・L・デアンドリア
こちらはハヤカワミステリ文庫。最近、新装版が出ました。
クイーンを溺愛したデアンドリアの名作。いわゆる「ミッシング・リンク」もので、当時としては斬新なアイデアだったと思いますが、今では何となく予想がつきます。しかしながら、読むべき価値はあります。

ここまで登場した海外ミステリは全部読んでますね。自分でも驚き(○_○)

『犬神家の一族』横溝 正史
何度も映像化されているので、皆さんもご存じでしょう。
石坂浩二(=金田一耕助)、市川崑(=監督)のゴールデン・コンビでリメイク版が製作中とのことなので、ファンは楽しみに待ちましょう。

『とむらい機関車』大阪 圭吉
失礼ながら、この作品は存じ上げていませんでした。(だって、Yuseumのテリトリーは「海外古典ミステリ」だから、・・・以下略)
戦前ほとんど唯一の本格推理作家による作品のようですね。

『黒死館殺人事件』小栗 虫太郎
日本三大奇書の一つ。アンチミステリとして有名。
最近では、青空文庫でも読めます
Yuseumは読んでません。(だって、Yuseumのテリトリーは・・・以下略)

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コメント 8

茅ヶ崎住人R

確かにケンネルってところがビックリ仰天ですね。それにしても綾辻さん、幅広い活躍ですねえ。
by 茅ヶ崎住人R (2006-08-13 16:46) 

ゆーじあむ

茅ヶ崎住人Rさん、nice!ありがとうございます。
なんで、ケンネルなんだろう? そこには綾辻さんの深い意図が[はてな]
by ゆーじあむ (2006-08-18 02:53) 

海音

コメント&TB有り難うございます。本棚のミステリみたいに背景まで楽しませてもらって、面白いマンガでしたね。
by 海音 (2006-08-18 06:47) 

crop

こんにちは。nice!&トラバ、ありがとうございました!
たしかにあの「伏線」は小説では難しいですね。
唐津さんの本のことは、私みたいなミステリーに疎い人間にはわからないところなので、興味深く読ませていただきました。
by crop (2006-08-18 13:10) 

はじめtまして。nice!とTB、ありがとうございました。
私は日本のミステリは殆ど読んだことがありません。海外作品なら少し…。昔アガサ・クリスティーを読み漁ったくらいです。
この作品は、佐々木倫子さんに魅かれて読んだのですが、お話がとても練り込んであって、重し朗読めました。
当方からもTBさせていただきますので、よろしくお願いします。
by (2006-08-19 04:40) 

ゆーじあむ

>cropさん、コメントありがとうございます。
 漫画ならではの伏線は面白いですね。
>灰色猫のミミさん、コメントありがとうございます。
 僕も実は日本のミステリはほとんど読んだことないです(^_^;
 こちらこそヨロシクお願いします。
by ゆーじあむ (2006-08-31 15:17) 

カタリーナ

佐々木さんのミステリーというのがどうにも想像できなくて、
(正確には綾辻さんの作品でもあるわけですけど)
何となく手を出してませんでした。(苦笑
絵柄的にはバッチリいけると思うんですが、
佐々木さんのノリだと、あの独特なボケやツッコミがありそうで、
どういうコラボレーションになるのか想像不可能……(-_-;)
でもYuseumさんのレビューを読んでたら、俄然興味が!
早速読んでみようと思います。
去年の記事なのに、見落としてたんでしょうか。ごめんなさい……。
by カタリーナ (2007-10-15 23:35) 

ゆーじあむ

カタリーナさん、そうです。
前半(後半もかw)、「あの」ボケとツッコミが全開です!
賛否両論ある作品ですけど、僕は好きでした(^^)

本は読まないけどマンガは読む、下の妹に読ませようとしたが、ミステリに関心ないから全く興味を示さず(-""""-;)ムムッ
by ゆーじあむ (2007-10-15 23:56) 

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