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A Kiss Before Dying…(11/15:追悼アップ) [Mystery]

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2007/11/12。
『死の接吻』『ローズマリーの赤ちゃん』の作者、アイラ・レヴィン氏が心臓発作で亡くなりました。
78歳でした。
心よりご冥福をお祈り致しますm(__)m
※)詳細: http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2311742/2351108

以下は、今年の初めにYuseumが書いた"A Kiss Before Dying"、すなわち『死の接吻』の感想記事です。

A Kiss Before Dying

A Kiss Before Dying

  • 作者: Ira Levin
  • 出版社/メーカー: Carroll & Graf Pub
  • 発売日: 2003/04
  • メディア: ペーパーバック



Yuseumは先日実家から戻ってきたのですが、実家ではよく本が読めました\(^O^)/
なんたって、これまで1ヶ月に1冊も読めない状態が続いていたのに、5日程度で3冊読めましたからね(・-・)(。_。)
そのうち始めに読んだ2冊は、先日ご紹介した『ハマースミスのうじ虫』と『二人の妻をもつ男』
でも、3冊目にこれ↓を読んで、先の2冊はすっかり霞んでしまいました・・・。

死の接吻

死の接吻

  • 作者: アイラ・レヴィン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2000
  • メディア: 文庫


この作品は傑作です!
さすがに、「作家・評論家・翻訳家等によるオールタイム・ベスト10」(長編部門;HMM2006-3)の第10位にランクインしているだけのことはあります。
もう50年前の作品なので、さすがに舞台設定など古めかしい部分はありますが、ストーリー自体は時代を超越しているので、現代でも十分楽しめます。

この物語は三部構成になっており、それぞれのタイトルには、製銅会社社長であるレオ・キングシップの3人の娘たち、(下から順に)「ドロシイ」、「エレン」、「マリオン」の名前がつけられています。
物語は、ある青年がドロシイの妊娠を知って動揺することから始まります。
現代では「できちゃった結婚」は当たり前なのかもしれませんが、50年前、しかもドロシイの父のレオは厳格な性格でしたから、2人とも大学生の状況では青年の非をレオが追及するのは必至であり、そうなれば彼の立身出世の野望が閉ざされてしまう・・・。
第1部は、そんな彼がドロシイの「自殺に見せかけた殺人」を練るクライム・ストーリーです。

ところが、この青年。第1部ではまさに「彼」としか書かれておらず、名前が明かされていません。
そこで、第2部では「『彼』はいったい何者か?」というフーダニットで楽しませ、スリルとサスペンスに満ちあふれた展開に興奮し、そして結末では驚愕してしまいます(゜◇゜)

しかし、物語はここで終わりません。第3部では・・・、
それから先は、皆さんで読んでみて確認してください。

なんといっても、この作品の魅力は叙述テクニックを駆使した、華麗で熟練した文章です。
これが(当時)23歳の青年の書いた作品(しかも処女作)だなんて、信じられない!!!
Yuseumにとっての「傑作」とは、文章を読んでいるのに、いつのまにかその作品の映像が脳裏に浮かび上がるような作品。
特に殺しのシーン、死のシーンでは、その情景がまざまざと頭の中に映し出され、さらにそのシーンが何度もリフレインするのです!

敢えて言うなれば、富豪のレオ・キングシップの描写がやや表面的で薄っぺらいのですが、これも「敢えて」であって、それは単に作者がレオの齢に達していないからに過ぎないでしょう。
この作品には、作者と同世代の人物が何人も出てきますが、いずれの人物も魅力的に描かれており、読んでいて飽きさせません。

この作品の解説は、結構ネタバレ気味なので、解説を読まずに本作を読むことをお薦めしますが、その解説の中で評論家のアンソニー・バウチャーは「ウールリッチとの類似性」を指摘しています。
コーネル・ウールリッチ=ウィリアム・アイリッシュ。
Yuseumの好きな作家の一人ですが、僕もまさに『死の接吻』を読んでいて、まさに「これはウールリッチだ(!o!)」と思いました。
そして、この作品はウールリッチの最高傑作にも匹敵する、いやひょっとするとそれ以上の傑作です!

そんな傑作にも1つだけ問題が(´ヘ`;)
この文庫本のカバージャケットの挿絵は、全然この作品世界を反映していません!
絵が上手下手の問題ではなく、この挿絵のタッチがそもそも違うのです。
この作品は、この挿絵に描かれているような「生温い」作品ではありません。
とにかく戦慄を覚えるこの作品。
未読の方は、是非読んでみてください!

ところで、作者のアイラ・レヴィンは寡作で有名ですが、この作品を書いた十数年後に、映画(下↓)も有名なモダン・ホラー『ローズマリーの赤ちゃん』を発表しました。
若くしてミステリとホラーの両分野に、それぞれ金字塔を打ち立てるなんてすごい作家です( ・_・;)
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ローズマリーの赤ちゃん

ローズマリーの赤ちゃん

  • 出版社/メーカー: Paramount Home Entertainment(Japan)Limited(CIC)(D)
  • 発売日: 2007/08/24
  • メディア: DVD


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チヨロギ

『死の接吻』はほんとに傑作ですよね~!
読んだのは10年以上前だったと思いますが、心理描写もストーリー構成も見事で、Yuseumさんがおっしゃるとおり、情景が鮮明に浮かぶような作品だったのを覚えています。
『硝子の塔』は「・・・」でしたが。[たらー]
今度、ほかの作品もチェックしてみたいと思います[にこっ]
by チヨロギ (2007-01-14 00:54) 

ゆーじあむ

チヨロギさん、nice!ありがとうございます。
いやぁ〜、こんな傑作をまだ読んでいなかったのかぁ(^_^;)、という感じですが、ホントにすごい作品でした[はぁと]
by ゆーじあむ (2007-01-15 17:29) 

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