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オリエント急行の殺人(名探偵ポワロ) -After- [アガサ・クリスティー]

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オリエント急行(笑´∀`)
ドラマ版では右から左へオリエント急行が走る姿が目立ちましたが、これ↓に合わせて反転しましたw

本題に入る前に。
この偉大なるTVシリーズ「名探偵ポワロ」も23年目となり、四半世紀近く愛されるロング・シリーズとなりました[TV]
そして、今年の秋頃より以下の5作品が制作される予定です。
『カーテン』が作られるので、いよいよ「名探偵ポワロ」もファイナル・シーズンとなります。。。
ポワロを演じてきたデヴィッド・スーシェ David Suchet さんも以前、
「65歳には引退したい。」
と仰っており、今年66歳になりますので。

ということで、戯曲『ブラック・コーヒー』と短編『呪われた相続人』The Lemesurier Inheritanceを除いて、クリスティーが書いた全てのポワロ作品が映像化されることになります。
(他にポワロが登場する短編はありますが、いずれもそれを原型に拡大化した短・中編があり、それらは既に映像化済み[映画]
『ブラック・コーヒー』Black Coffeeは戯曲だから、映像化しないのかな?
(なお、クリスティー研究家の手によるブラック・コーヒー (小説版)もあります。)
『呪われた相続人』は、日本では「教会で死んだ男」(短編集)に所収されていますが、なぜ映像化されていないのかは謎。
テレビ版 名探偵ポワロにて、当時(「ニュー・シーズン」になる前)のプロデューサーであるブライアン・イーストマンが、全ての短編を映像化したように話しているから、完全に抜け落ちたのでしょう[あせあせ(飛び散る汗)]
ちなみに、ブライアン・イーストマンは1995年時点で、『カーテン』は2000年くらいに作られるだろう、と考えていましたが、実際は10年以上待つことになりました。
それは、彼が創立し「名探偵ポワロ」を製作してきたカーニバル・フィルムズが、1997年にオーストラリアの会社に売却され、そして、2001年(名探偵ポワロ DVD-SET8)をもって、製作から離れたことが一因と思われます・・・。


さて。

名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 4

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  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: DVD

パレスチナで事件を解決したポワロはイギリスに戻るためオリエント急行に乗車。列車には国籍も階級もさまざまな人々がいた。そのなかのひとり、アメリカの富豪ラチェットが刺殺死体で見つかる。

原作はこちら[右斜め下]
オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/04/05
  • メディア: 文庫
-Before-にも書きましたが、賛否両論が出ることは分かっていました(・・)(。。)
偉大なる原作に加えて、偉大なる映画『オリエント急行殺人事件』(以下、「映画版」)もある[カチンコ]
おかげさまで、[TV]放映直後は拙ブログもいろいろ参照されたようで(..;)、翌週はSo-netブログテーマ「本」で1位のアクセスになってたりして、反響の大きさにびっくりしました(゚ロ゚屮)屮
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記念に(^^)v

予め、今回のドラマ版に対する自分の感想をまとめておきます。
  1. 今回のドラマ版は、自分の中では「あり」。
    実に65作品目の「名探偵ポワロ」であり、後ろに『カーテン』がチラチラ見えている以上、こういう「テーマ」になるのは、ある意味当然の帰結である。
  2. しかし、その作り方が上手だったか、といえば、あまり上手でない。
    「89分」で『オリエント急行の殺人』を製作するにはあまりにも短すぎるが、「テーマ」を重視しすぎて「謎解き」を大きくカットしたため、ミステリとしては何だかよく分からないものになってしまった。
  3. 原作においても、ドラマ版においても、最後のポワロの「真意」が分からない。

以下、「ネタバレあり」で感想を述べる前に。
これまで、「名探偵ポワロ」は長編29作、短編36作が製作されていますが、オープニングの英字タイトル画面。
たいていは「アールデコ」調なフォントで統一されています。
名探偵ポワロ 全巻DVD-SETに比べて、「ニュー・シーズン」ではやや丸みを帯びていますが。)
例外は3つ。

『スタイルズ荘の怪事件』名探偵ポワロ DVD-SET3):Times Italicみたいな感じ。
『ナイルに死す』名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 1):Times Boldというかホラー映画のタイトルみたいな赤字
そして、今回の『オリエント急行の殺人』

『スタイルズ〜』は実質的な「名探偵ポワロ最初の事件」であり、後2つは大ヒットした映画作品がある。
だから、このフォント変更は製作スタッフの気合いみたいなものでしょうか。。。

1. については-Before-も触れているので、以下、主に3.を中心に書いていくことにします。
Yuseum、「分からない」のでダラダラとまとまりのない文章を書いていますが、ご容赦を(__)

後は、本作のネタバレにつながるので、これから下の文章を読むときはご注意を!






ポワロの『真意』が分からない」と書きましたが、何が分からないかというと。
「ポワロは、なぜ今回は犯人たちを見逃したのか?」

ポワロという人物は、「殺人は何があっても許されない」という考えの持ち主。
それは、彼が(英国では少数派の)カトリック教徒であることにも依ります。

アルバート・フィニーがポワロを演じた「オリエント急行殺人事件」(映画版)の場合は、「1本の娯楽作(エンターテイメント)[カチンコ]だから別に構わないんですよ。
その後のピーター・ユスティノフがポワロを演じた映画とともに、一連の映画シリーズとみなしたとしても10作にも満たないわけですから。
ポワロは最後に2つの解決法を示し、映画版では国際寝台車会社の重役ビアンキ(原作&ドラマ版ではムッシュー・ブーク)がその推理のどちらかを選ぶように仕向けていますが、この時ポワロは、
(地元)警察は単純な答えを歓迎するでしょう。
と、暗に真犯人たちを見逃すことを促す発言をしています。
そして、真犯人の皆様はその判断を喜ぶ。ハッピー・エンド[バー]

原作の場合、ポワロはブークの意見を聞き、ブークはコンスタンティン医師の同意を得る。
その様子を見てから、ポワロは次のように発言し、物語は終わる。
事件の真相についての説明も終わりましたので、わたしはそろそろ退場するとしましょう……
そこでは、ポワロ自身の考えは表明していない。
ムッシュー・ブークがそう言うのだから、そうしましょう、という感じである。

しかし、「殺人犯を見逃す」ことはエルキュール・ポワロの主義、信念に反することでは[exclamation&question]
『オリエント急行の殺人』は1934年に発表された8作目のポワロ長編であり、それまでに30編弱の短編も発表しています。
ただ、興味深いことに。
『オリエント〜』以降の1930年代の作品は、短・長編併せて、
「殺人は許されない。」
という、殺人者に対しては容赦のないポワロのスタンスが強調されている気がするのです。

例を挙げてみましょう。
まずは短編から。
『船上の怪事件』(「黄色いアイリス」所収)は1936年に発表された作品。
この作品は、ポワロがある「トリック」を仕掛けて、それにより犯人が判明しますが、犯人には同情の余地があったため、最後、ある登場人物に、
残酷なトリックですわ
と叫ばせます。
それに対して、ポワロ曰く。
私は殺人はよいこととは思いませんから。

『厩舎街(ミューズ)の殺人』(「死人の鏡」所収)も1936年に発表された作品。
この作品では、ポワロの考える<正義の裁き>がどういうものなのかを垣間見られる、興味深い作品です。

『砂にかかれた三角形』(「死人の鏡」所収)も1936年に発表された作品。
この作品のプロットや舞台設定等は、後の『ナイルに死す』(1937年)や『白昼の悪魔』(1941年)に生かされていることが分かりますが、この作品についてはドラマ版に注目。
ドラマ版では、礼拝堂にてポワロが「十字を切る」シーンがあります。
容疑者(カトリック教徒)に対して、「信仰が慰めになる」と説くシーンもあります。
そして、先の2作品とともに、これら3作(『海上の悲劇』、『ミューズ街の殺人』、『砂にかかれた三角形』)はいずれもシーズン1名探偵ポワロ DVD-SET1)で製作された作品。
ポワロがカトリック教徒で、正当なる正義の裁きを求め、殺人を断固として許さない態度を示すことは、ドラマ「名探偵ポワロ」において最初から表現されているのです。

少々、話がドラマ版に逸れたので、原作に戻りましょう。
次に長編を取り上げます。
『ひらいたトランプ』(1936年)は、ある人物の注意を他に向けるため、別の人物に『オリエント急行の殺人』で使われた凶器の短剣を見せるわけですが(; ・`д・´)
ここでもバトル警視の、
人間が他の人間を独断で裁いたり、自分勝手の法律を使ったりすることは絶対に許されないですよ
の発言に対してポワロも同意し、
私はいかなる場合も殺人を認めません
と付け加えます。
それに対して、オリヴァ夫人はこう反論する。
「もっと簡単に、狐狩りや、帽子の羽根飾りに使うみそさざい撃ちと同じように考えられないかしらね? この世にだって、撃ち殺されたほうがためになる人はいるんじゃない?」
「それは、おそらく、いるでしょう」
「じゃあ、これで問題解決でしょ!」
「あなたは私の言うこと、おわかりになっていません。私は殺される人のことを言ってはいません。殺す人の心に起こる変化を申しておりますんです。人間を殺せるという心の持ち方について、です」
「じゃあ、戦争の場合はどうなの?」
「戦争では、たしかに、個人的な判断を行使して殺人するのではありません。しかしだからこそ戦争とはもっとも危険なものなのです。戦争では人間は相手を殺すことに正当な理由をつけられます。このように、人間が他人の生死を左右できるという考えに、一度でも取りつかれたものは、もっとも危険な殺人犯人になりかかっているのです—利益のためでなく—思想のために人を殺す—こんな人ははなはだ傲慢な殺人犯人です。そういう人は全能の神(ル・ボン・デュウ)の権能を奪いとったことになります」

極めつけは『死との約束』(1938年)。
ポワロがボイントン夫人の殺人事件を調査するために何人かの容疑者を一人ずつ尋問するのですが、その中の一人であるネイディーン・ボイントンがこう切り出します。
「聞くところによると、あなたはかつてオリエント急行の殺人事件で、陪審の評決をそのまま承諾なさったそうじゃありませんか」
ポアロはけげんな顔で彼女を見た。
「だれがそんなことをいったのかな」
「あれはほんとうですか」
彼はゆっくりいった。
「あの事件は—違いますよ」
「いいえ、いいえ、違いませんわ! 殺された男は悪党だったんですもの—」彼女は声を落とした—「義母と同じように」
ポアロはいった。
「それは被害者の人格とはまったく関係がないのです。個人的な私的な判断によって他人を奪った者は、社会生活を送ることは許されないのですよ。わたしは—エルキュール・ポアロは—そんなことを決して許しませんよ!」
「それは、あんまりですわ!」
「マダム、わたしはある意味では融通のきかない男です。わたしは人殺しを決して許しません! これがエルキュール・ポアロの最終回答です」

なお、あの事件は—違いますよというポワロの言葉はその言葉通り、「オリエント急行殺人事件は、今回の事件とは違いますよ。」という意味。
原文にも—(ダッシュ)が挿入されていますが、ネイディーンのあれはほんとうですかに対して違う、と言っているわけではないようです。
・・・でも。
何が違うのでしょう???

『愛国殺人』(1940年)まで引用するのは野暮でしょうか。
ポワロはこう言います。
私は国歌のことなどに従っているのではありません。私のたずさわっているのは自分の命を他人から奪われない、という権利を持っている個々の人間に関することです

以上。
『オリエント急行の殺人』が書かれてからわずか5年くらいの間に、ポワロの、
「殺人は許されない。」
という考えは、ますます強固になったように思われます。
もちろん、『オリエント〜』以前の作品にも、ポワロのその姿勢は見てとれます。
例えば、1923年に発表された『コーンウォールの毒殺事件』(「教会で死んだ男」所収)など。
(そして、そのドラマ版『コーンワルの毒殺事件』(名探偵ポワロ DVD-SET2)は、原作以上に殺人犯に対して非情[がく~(落胆した顔)]
例外は、ポワロが唯一の失敗と見なしている『チョコレートの箱』(「ポアロ登場」所収;1923年)。
ただ、これはポワロがベルギー警察時代の事件であり、【以下、ネタバレにつき反転】被害者はカトリックを迫害し、その上殺人者でもあり、一方、犯人の行為はベルギーのためでもあり、犯人はまもなく「神の裁き」を受けることが分かっていたから、【反転終】ポワロは見逃しました。
・・・ひょっとすると、それも含めてポワロは「失敗」と考えているのか?


ようやく、ドラマ版に戻ります。
「名探偵ポワロ」シリーズにおいて、デヴィッド・スーシェはエルキュール・ポワロを演じるにあたり、原作の長編&短編を全て読んでリストを作り、クリスティーがポワロをどんな人物にしたかったか明確にしようとし、自分のやり方で「ポワロ像」を作り上げていることが、テレビ版 名探偵ポワロに書かれています。
したがって。
『オリエント急行の殺人』において犯人たちを見逃すことは、「ポワロ像」に合わないのです。
何故、ポワロがそういう決断をしたのか、その「真意」は結局私には分かりませんが、素直に殺人犯を見逃すことはあり得ない。
ましてや、ドラマ版は何度も言うとおり「65作品目」で、そのうち約50件の殺人事件に関与している。
だから、今回の『オリエントの急行の殺人』にて「苦悩するポワロ」を描くのは「あり」だと思います。
テーマは「正義とは何か?」

しかしながら、それを描くにはあまりにも宗教に頼りすぎ、89分はあまりにも短すぎた。
最近、「名探偵ポワロ」シリーズの長編はどんどん時間が短くなってきており、『スタイルズ荘の怪事件』は103分、『ナイルに死す』でも98分なのに、今回は89分。
(世界的不況だとか、近年のTV製作の現状、とかいろいろあるのでしょう…)
そこで、「名探偵ポワロ」において長編をドラマ化する際には、原作に登場するキャラクターのうち数名を削って物語を再構成する方法がよく取られ、それらはまずまず成功しています。
最近の例では、物語の最後に、
(探偵は)審判を下さない(おそらく、今回の伏線。)
と言わせている、『三幕の殺人』

だが、『オリエント急行の殺人』は、オリエント急行という「箱」が決まっており、「人数」が重要だから、登場人物を簡単に削るわけにはいかない。
今回のドラマでは、アメリカの私立探偵であるサイラス・ハードマンを削り、代わりにコンスタンティン医師を犯人たちに加えました。
これは-Before-の時点では気づかなかった[たらーっ(汗)]
コンスタンティン医師を犯人に加えることで、彼はポワロの「ミス・リード」役になりました。
例えば、刺し傷は12カ所なのに「15カ所」と言ってみたり。
でも、あまり上手く機能はしてないですね。

ミステリとしての『オリエント急行の殺人』の面白さは、もちろんその大胆な犯人設定にもありますが、予定外でポワロがオリエント急行に乗り込んだことで、犯人たちがポワロに仕掛けてくる<レッド・ヘリング(赤い鰊)>、つまり、たくさんの「偽の手掛かり」
そして、無関係と思われる人物たちがお互いのアリバイを証言することにより、そこに存在する全ての人物について、犯行時刻と思われる時刻におけるアリバイが成立していることにあります。

原作においては「第二部 証言」より、1人1人に尋問することになるのですが、これを普通に映像化すると、退屈な映像になるのは間違いない\(~o~)/
だから、映画版では「映画館に客を呼ぶ魅力のあるオールスター・キャストの重みでクリスティーの長編を押しつぶす試み」に出た。
実際のところ、映画版においても真面目に推理しようとすると、いくつか不足している描写があるのですが、(原作をカットしている、)そこは魅力あるキャラクターとポワロとのやり取りで、娯楽性を補っているわけです。
ドラマ版でも、製作前から「オールスターキャスト」をPR(日本ではあまり馴染みのない俳優さんが多いですが)していました。
しかしながら…orz

ポワロが珍しく科学の力を借りて、帽子箱を使って燃え残りの書類から文字を浮き上がらせ、この殺人事件がデイジー・アームストロング誘拐事件と関係があると分かるシーン。
(なお、原作では"member little Daisy Armstrong"と浮き上がりますが、映像を見てお分かりのとおり、あの方法ではこんな長文を読み取るのは不可能なので、映画版もドラマ版も"AISY ARMS"のみ読み取れることになっています。)
128分の映画版では、開始49分頃にそれが判明します。
89分のドラマ版では、開始36分頃に「科学実験」を行い、ワンクッション置いて、ポワロが43分頃にアームストロング誘拐事件との関連性を指摘する。
ここまでは、ドラマ版のテンポも悪くはありません。

一方、ポワロが「2つの解決法を示す」のは、映画版では95分くらいから。
エンディングまで30分ほどです。
ドラマ版では68分くらいから、エンディングまで21分。

要するに、容疑者と思われる人物たちとポワロとのやり取り、あるいは「対決」とでも言えばよいでしょうか。
そこに映画版では45分ほど当てられているのに対し、ドラマ版では15分くらいしかないから、多数の人物描写も上手くできず、個々の人物像が薄っぺらいものになり、また、「謎解き」要素も霞んでしまった。
映画版のポワロは殺人の起こった夜を、
"The Night of the Reg Herrings"(私を欺く夜)
と表現しています。
ドラマ版では、その「赤い鰊 Red Herrings」が弱々しすぎた。

分かりやすいのは、ハバード夫人が凶器の短剣を持ってきたとき
原作では第二部の終盤で持ってきており、謎を深めるエッセンスになっている[グッド(上向き矢印)]
映画版ではポワロの推理が始まる4分前に持ってきているから、そこまでの効果はないものの、インパクトは与えている。
ドラマ版では、もうポワロは真実を把握している状態で持ってきているから、一瞥しただけで全く無意味なアイテムになっている[バッド(下向き矢印)]

ただ、今回のドラマ版は何も積極的に原作から逸脱しようとしたわけではなく、細かな点においてはむしろ映画版より原作に忠実です。
例えば、ドラマ版では「ハリス氏」についても丁寧に触れているし、かなり細かいですが、ハバード夫人が侵入者騒ぎを起こした際、ポワロが車掌に「ミネラルウォーター」を頼んだり[水瓶座]
ただ、全て描くには時間が足りないから、設定を変える点が多々あった。
先に触れたコンスタンティン医師の位置づけ然り、腕に重症を負った家庭教師然り、、、「事件発生から推理まで」何とか分かりやすく持っていこうという意図は感じましたが、残念ながらあまり上手くいっていない( -_-)
それどころか、短いはずのその時間帯が冗長に感じることもあったくらい( -.-)( _ _)

そして、「テーマ」の問題がある。
まやかしの陪審員が、でたらめの人民裁判を。いったい何様のつもりですか[exclamation]
と、ポワロにしては珍しく激高し、
人々が好き勝手に隣人を裁いていた、暗黒の中世と同じ! 法の精神は高く尊られるべきもの。地に落ちないよう、我々が支えなければならない。それが崩れてしまったら、文明社会は全てのよりどころを失ってしまう[exclamation×2]
と怒鳴り散らす。
でも、これまで上に記したように、他の原作をよく読んだ方なら、ポワロは当然こういう思考の持ち主であることは明白でしょう。

そこで、「神」である。
何度も書くようにポワロはカトリック教徒であり、本作においても「裁き」は、
神に委ねなさい。
と発言している。
対して、本作に登場するスウェーデン婦人のグレタ・オルソンは、その言動からプロテスタントと思われる。
(原作では「宣教師」と記されているが、宗派は不明。)
そのせいもあって、ポワロとは激しく対立する描写がある。

正直、キリスト教には詳しくないYuseumですが、「正義」の行き着く先が「神」になり得ることは理解できる。
そして、「名探偵の苦悩」の行き着く先も「神」になることも大いにあり得る。
だから、宗教を盛り込むことについては異を唱えない。
ただ・・・、盛り込み過ぎ?

例えば、殺人の起こる夜にポワロが祈るシーン。
ラチェットの同様な行為との対比という面白さはあるけれど、余分のような気がします。
原作にそんな描写がないので、ポワロはカトリック教徒であることを強調したいのは分かるけれど。
「名探偵ポワロ」全作品を通しても、唐突感があるのは否めない。
(もちろん、ポワロ=カトリックを示す描写は先に記したように最初からあり、「ニュー・シーズン」では特に顕著ではあるが。)
カトリックの象徴であるロザリオは、映像の「アクセント」として、ここぞと言うときにチラリと見せればよかったのである。

それでも、ラストにポワロがロザリオを握りしめながら、雪の中を歩いてゆく姿は感涙ものである[もうやだ~(悲しい顔)]
(「ポワロさん、そのままどこへ行くの?」[雪]と野暮なツッコミはなしにしましょうf^_^;)
ポワロは結局、犯人たちを見逃した。
でも、その心はまだ定まっておらず、本当にこれでよかったのか、と悩み続けている。
目にうっすらと涙を浮かべて歩くポワロ=デヴィッド・スーシェの演技は「素晴らしい」の一言に尽きる(ノД`)

このまま『カーテン』に向かうのであろうか?
「名探偵ポワロ」データベースによれば、『カーテン』の脚本はケビン・エリオットらしい。
彼は『ナイルに死す』や『五匹の子豚』(いずれも名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 1)を脚本しており、とりわけニュー・シーズンの中にあって『五匹の子豚』の評価は高い。
(逆に、原作の大改変をを行うのはガイ・アンドリュースw)
ただ、アガサ・クリスティーのミス・マープル DVD-BOX 1の『書斎の死体』のような驚愕の改編作の脚本もエリオットさんですが:(;゙゚'ω゚'):

・・・素晴らしいファイナル・シーズンが製作されることを期待します。

[シャープダイヤル]これを書くにあたり、上述のリンク先の他、以下を参照したので記載します。
アガサ・クリスティ大事典

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  • 発売日: 2004/11/18
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アガサ・クリスティー ミステリ・ハンドブック

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名探偵ポワロの華麗なる生涯

名探偵ポワロの華麗なる生涯

  • 作者: アン ハート
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 1998/05
  • メディア: 単行本


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rafaero

こんばんわ〜〜♪

うわ〜〜テーマ「本」で1位!!
すごいですぅ〜〜♪
おめでとうございますぅ〜(`・ω・)b

私のPCの方は、バックアップ作業を実行中です♪
頑張りますぅ〜〜!!
by rafaero (2012-03-02 02:37) 

むらひで

89分でオリエント急行を映像にするのは、チト無理。
登場人物が多すぎて、その人たちの関係を説明していたらそれだけで。。
まあ、面白いと思ったら本読んで、ということでしょうか
by むらひで (2012-03-02 14:17) 

vega

ポアロのTVシリーズ、すべて観てきた大好きなシリーズです。
今回の「オリエント急行殺人事件」、見終わった後も今も、
どう評価して良いかわかりません。
こんなポアロもありなのかな…と思う反面、
ここまで宗教に頼るのはどうなのか…と。

正義とは何なのか…人それぞれの正義…普遍の正義。
いろいろ考えさせられた「オリエント急行」でした。

いよいよ「カーテン」ですか…
楽しみなような、さみしいような…。
by vega (2012-03-04 08:28) 

AP

管理人さんの力説おなじく共感です。
あんなにポワロが切なく寂しく感じたのは
歴代で初めてでした・・・。

なんだか「相棒」の杉下右京さんみたいだなとも感じたんですが(笑)、
それだけ21世紀が20世紀の「ロマンチズム」を許さない
世相になっている証なのかもですね・・・。

by AP (2012-03-05 18:44) 

Yuseum

>rafaeroさん、お祝いコメントありがとございます(*^O^*)
PCは、その後無事ですか[はてな]

>むらひでさん、コメントありがとうございます。
やはり89分ではどうしようもないですね[がーん]

>vegaさん、コメントありがとうございます。
自分も未だにどう評価していいものやら、と悩みます[はぁっ]
「カーテン」も見たいような、見たら切なくなるから見たくないような[あせっ]

>APさん、コメントありがとうございます。
確かに右京さんっぽいかも[じーっ]
21世紀的な解釈は時代のニーズとして必要ですけど、その「さじ加減」は難しいですね(゚-゚)
by Yuseum (2012-03-14 22:40) 

はと

オリエント急行ドラマ版最高!!
登場人物の気持ちもわかりやすいし。
by はと (2012-08-16 20:57) 

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