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死者のあやまち(名探偵ポワロ) [アガサ・クリスティー]

オリヴァ夫人再登場。「名探偵ポワロ」最後の撮影作品です。
名探偵ポワロ - NHK

死者のあやまち Dead Man's Folly
ポワロは旧友の推理作家オリヴァ夫人に呼び出され、田舎の豪邸ナス屋敷に到着する。1年前に屋敷を購入したスタッブス卿が翌日に祭りを開催することになっており、地元の人たちも招待されているという。祭りで行う殺人推理ゲームのシナリオを書いたオリヴァは、嫌な予感がするとポワロに告げる。ゲームで被害者を演じるのは地元の少女マーリーン。しかし祭り当日、オリヴァの不安が的中し、マーリーンが本当に殺されてしまう!


原作はこちら (Kindle版[左斜め下]

死者のあやまち (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

死者のあやまち (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/12
  • メディア: 文庫

1956年に発表された本作はナス屋敷という豪邸が舞台ですが、この屋敷はクリスティーの夏の別荘グリーンウェイ・ハウスをモデルにしているとのこと。
そして、そのグリーンウェイ・ハウスで撮影が行われています[映画]
なんて、すばらしい[ぴかぴか(新しい)]
Greenway - Visitor information - National Trust

原題の"Folly"、題名では「あやまち」と訳されていますが「愚行」いう意味が最も近い言葉です。
「阿房宮」と訳される建築物を指す言葉でもあります。
この阿房宮(今回は「四阿(あずまや)」と訳されていた建物ですが)とは「18世紀以降に建築されたカントリー・ハウス(地方に建つ貴族の屋敷)に見られる『円柱のたくさんある、白亜の小さな寺院』のような建物を指す言葉」(クリスティー文庫解説より)です。
このあたりにも注目して、原作がどの程度忠実に再現されているか確認したいところ。(後述)

なお、近年になって本作の原型となったと言われる中編"Hercule Poirot and the Greenshore Folly"が発表されたのですが、この中編は今月下旬に発売されるハヤカワ・ミステリマガジン 2014年 11月号 [雑誌] に翻訳掲載されているようです。(『グリーンショアの阿房宮』)
「さようなら、こんにちはポアロ」(ハヤカワさんだからポ「ア」ロ)と題して種々の特集が組まれており(詳細)、見逃せません(; ・`д・´)!
ミステリマガジン 2014年 11月号 [雑誌]

ミステリマガジン 2014年 11月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/09/25
  • メディア: 雑誌

監督は「名探偵ポワロ」初めてのトム・ヴォーンですが、脚本は『象は忘れない』に引き続いてニック・ディア。
「ニュー・シーズン」になってからは、最も多く「名探偵ポワロ」の脚本を担当しています。


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概ね原作に忠実な映像化でした[TV]
祭りの最中でポワロさんが輪投げをしたら大きなキューピー人形が当たって、それを子供にプレゼントするシーン[プレゼント]
あれも原作通りなんですよ!

もっとも、原作では泣いた子供が泣き止むほどの効果を示しましたが、今回のドラマでは、貰った子供さんは戸惑った表情を浮かべていたようでしたが・・・[わーい(嬉しい顔)]

以下、本作のネタバレにつながるので、これから下の文章を読むときはご注意を[exclamation]

 

 

"Folly"について蛇足ながら。
四阿(あずまや)のコンクリートの土台を壊している前で、ポワロさんが、
「ナス(屋敷)の主の愚行」
とフォリアット夫人に話すシーンがあります。
つまり、題名の"Dead Man"とはジョージ・スタッブス卿、死んだと思われていたフォリアット夫人の次男ジェームズを指しており、「ナス屋敷の所有者の四阿」の下に彼の本当の妻ハティを殺して埋めるという「ジョージ卿の愚行」、というダブル・ミーニングなんですね。

原作の最後はフォリアット夫人のこんな言葉で終わります。
「このたびのことで、わざわざおいでくださいましてありがとうございました、ムッシュー・ポアロ。もうお帰りでいらっしゃいますね、なにしろ、ひとりだけになって考えなければならないこともあるものですから……」
原作ではこの後にフォリアット夫人が何を考えたかは描かれていません。
しかし、今回のドラマではフォリアット夫人ならおそらくこう考えて行動したであろう、というシーンが描写されています。
そして、ポワロさんはそれを容認します。
おそらく、その結果も推測した上で。
 
原作にはないシーンですが、ポワロさんが殺人の加害者に対してこのような態度をとるのは珍しくありません。
私は真っ先に『ナイルに死す』を思い浮かべたのですが、例えば『エンド・ハウスの怪事件(邪悪の家)』なども。。。
そして、おそらくこのシーンを挿入したのは来る『カーテン』を見据えてのことだと思われます。
思えば、『象は忘れない』では犯人に、
「人を殺しても簡単に許されるわけ?法に触れるんじゃなかったの?」
と言わせ、 『ビッグ・フォー』においては犯人がポワロ流≪大団円≫を揶揄し、
「お互い似た者同士なんだよ!」
と。
これらはポワロさんの根幹に関わることであり、前シーズンの『オリエント急行の殺人』もそうでしたが、『カーテン』への布石が着々と打たれている気がするのです。
そういうわけで、『カーテン』の直前の作品がどうドラマ化されたのか、注目したいところです。


その直前の作品とは、『ヘラクレスの難業』。
これは原作がもともと12の連作短編集なのですが、それを1本のドラマに仕上げたということで、いったいどんな風にドラマ化されたのか気になるところです。
(原作の改変があるのは間違いないですが、意外に世評は悪くなさそうなので。)

あと、ポワロにとっての「あの女(ひと)」ロサコフ伯爵夫人が再登場するのもポイント。
(原作では最後の短編『ケルベロスの捕獲』に登場します。)
伯爵夫人は『二重の手がかり』で登場していますが、女優さんはその時とは違うようです。
そのあたりの整合性はどうなっているのかな?

なお、原作はギリシャ神話の「ヘラクレスの12の難業」を読んだポワロさんが、これにちなんだ12の事件を解決してみせよう、というところから始まります。
(「ヘラクレス Hercules」のフランス語読みが「エルキュール」。)
この12の難業をある程度知っていれば、より楽しめるかもしれません。
旧ハヤカワ文庫 ヘラクレスの冒険 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 1-4)) ではこの12の難業が訳者あとがきに紹介されていますが、新訳クリスティー文庫 ヘラクレスの冒険 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) にはこれがないので。。。
こちらのサイト[左斜め下]など見ておいた方がいいかも(._.)φ
ヘラクレスの12の難業|名探偵ポアロが好き
 

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