カーテン〜ポワロ最後の事件〜(名探偵ポワロ) [アガサ・クリスティー]
<特報>
デヴィッド・スーシェさんが日本のファンの皆様へTwitterでメッセージを!!!
(実は、『カーテン』見終わった後、スーシェさん宛に私も感謝の@ツイートをしたのでした(^^ゞ)
昨日(2014年10月6日)、遂に日本でも最終回が放送されました。。。
放送最後にテロップで、
「25年間ご覧いただき、ありがとうございました」
と出ましたが。
こちらこそ、ありがとうございます(TдT)
名探偵ポワロ - NHK
ポワロ最後の事件。その舞台は、ポワロ最初の事件が起きた「スタイルズ荘」だった。
カーテン〜ポワロ最後の事件〜 Curtain: Poirot's Last case
ポワロは親友ヘイスティングス大尉をスタイルズ荘に呼び出す。ここは、かつて二人が初めて一緒に解決した殺人事件の舞台になった屋敷だが、現在はゲストハウスになっている。ヘイスティングスは再会したポワロのやつれた車椅子姿に驚く。ポワロは「ここが再び殺人現場になるが標的は不明だ」とヘイスティングスに告げ、屋敷に潜む殺人犯を捕えるパートナーとして、動けない自分の代わりに情報収集をしてほしいと頼む。
原作はこちら( Kindle版、 )
原作はアガサ・クリスティーが亡くなる直前の1975年に発表されましたが、執筆されたのは1940年代初頭、つまり第二次世界大戦中であったのは有名です。
ポワロは老いて身体も不自由となり、ヘイスティングス大尉も愛する妻(どの作品で出会ったのかは端折りましょう)を失ったばかり。
そんな二人が、ポワロ初登場作にしてクリスティーの処女作でもある『スタイルズ荘の怪事件』の舞台、スタイルズ荘で久しぶりに対面します。
そして、そこにはヘイスティングスの娘ジュディスも・・・。
ヘイスティングス大尉が語り手となっている作品です。
そんな原作をドラマ化した監督はヘティ・マクドナルド。(『青列車の秘密』)
正直、『青列車〜』のドラマ化はイマイチだったと思いますが、"Poirot and Me"(Kindle版、翻訳望む)の最初の部分だったかな?によれば、ポワロ役のデヴィッド・スーシェさんは彼女に絶大な信頼を置いていたことが伺え、『青列車〜』もフェイバリットの1つであることはミステリマガジン 2014年 11月号 [雑誌] にも触れられていました。
そして、脚本は今年6月に亡くなったケヴィン・エリオット。(『ナイルに死す』、『五匹の子豚』)
クリスティー関連作品について言えば、アガサ・クリスティーのミス・マープルの脚本を多く手がけています。(『書斎の死体』、 『動く指』、『ゼロ時間へ』、『ポケットにライ麦を』、『鏡は横にひび割れて』、そして日本未公開の『終りなき夜に生れつく』)
同性愛をテーマにした作品を多く書かれた方のようなので、クリスティー作品の脚本においてもその影響が見られるものもありますが、概ね原作に忠実な脚本が多いように思われます。
こちらのブログ記事によれば、ドラマ制作チームが彼に『カーテン』の脚本を依頼したのはなんと10年以上前。
すなわち、彼が『ナイルに死す』と『五匹の子豚』の脚本を仕上げたときには、もうオファーがあったというのです
この『ナイルに死す』や『五匹の子豚』が制作された第9シーズン、日本では名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 1に収録されている作品ですが、このシーズンより「名探偵ポワロ」の制作チームは大きく変わっています。
この「ニュー・シーズン」を担当したドラマ制作チームは、当初から『カーテン〜ポワロ最後の事件〜』を制作することを目的としたチームであり、それに向けて残りの長編作品をドラマ化していたとも言えそうです。
(主に金銭的な問題が原因で、その道はなかなか険しかったようですが。)
こうして、日本でも『カーテン』が放映されたことに感謝しながら、本作を鑑賞します
撮影がファイナル・シーズンの最初に行われたことは、特番の「さよならポワロ」でも触れられていましたが、日本語吹替は最後に行われた、とポワロ役の熊倉一雄さんがミステリマガジン 2014年 11月号 [雑誌]にて述べていました。
熊倉さん曰く「長い長いおしゃべりがきつかったなあ(笑)」のラスト(実に20分近く)は必見です!
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原作を忠実にドラマ化して良い作品だったと思います
もちろん、カットされた部分もあり、原作を読んだ後では特に序盤がやや駆け足な展開に感じましたが、この場面もちゃんと再現したんだ(!o!)と思ったシーンもあり(後述)
今回のスタイルズ荘は、実は『スタイルズ荘の怪事件』で撮影された建物(Chavenege House)とは違うようです。(追記:Shirburn Castleでした。)
現在はゲストハウスになっているという設定もあって、自分はそんなに違和感を感じなかったのですが、建物に興味のある人は気になるのかな?
エリザベス・コールが奏でるピアノ曲は、ショパン作曲;24の前奏曲 作品28 第15番 変ニ長調 ≪雨だれ≫。
『五匹の子豚』でサティのグノシエンヌが印象的に流れていたことを思い出しました。
この≪雨だれ≫、一説にはマジョルカ島で結核を患ったショパンの死への恐怖感、生への絶望を表しているとも言われており、この曲がこのドラマの要所で使われたのは興味深いところです。
久しぶりにポワロさんとヘイスティングス大尉とのやりとりが見られたのはよかったです。
ヘイスティングス大尉。心中穏やかではなかったとはいえ、ベッドでもう弱々のポワロさんが、
ポワロ「飲み物を…」
ヘイスティングス「結構です。」
ポワロ「私に!」
のシーンには、場違いながら思わず笑ってしまいましたw
そして、「シェラミ…。」(Cher ami; 親愛なる友よ)からは涙(ノД`)
以下、本作のネタバレにつながるので、これから下の文章を読むときはご注意を
「ある葬儀で、ヘイスティングスが気持ちの悪い悪鬼のような老婆に声をかけられる」シーンなど。
原作にある"X"という表現もなかったですね。
本筋ではないこともあり、時間の制約によるものだと思われますが、それがないからいつまで経ってもモヤモヤと(´ε`;)
逆に、原作のここをちゃんと再現したんだ、というシーン。
フランクリン夫人が死んでしまう原因となった、ヘイスティングスがコーヒーカップの載った本棚付きの回転テーブルを半回転させてしまうシーンです。
(最後の再現シーンではなくて)
また、1分足らずでしたが、 ヘイスティングスがジョージを訪れるシーンを描いていたのはよかったです。
(ジョージ、いいですよね〜σ(^◇^;))
そして
あのポワロさんの「つけひげ」も原作通りです
・・・ただ、原作では「鬘(かつら)とつけひげ」なんですね。
ヘイスティングス大尉の目をあざむくために、原作ではポワロさんは鬘を取って白髪をもじゃもじゃにして立たせてノートンの振りをするわけですが。。。
「名探偵ポワロ」のポワロさんの卵形の頭の頭頂部は、どう見ても鬘をかぶっているようには見えない( ゚Å゚;)!?
つけひげのみを取るその行為は一見無意味のように思えます。。。
しかし、「名探偵」ポワロの象徴である「ひげ」を取り外すことは、普段「私は法律ではない」と語るポワロさんが「法律」となるのに必要だったものと思われます。
(このあたり、前作『ヘラクレスの難業』などが伏線となっているのでしょう。)
そして、私はこのシーンを見たとき、俳優デヴィッド・スーシェが名探偵エルキュール・ポワロに文字通り「引導を渡している」ようにも思えました。
実際、ノートンを殺す瞬間のその目はギラギラとし、まさに別人でした。
(スーシェさんは「名探偵ポワロ」を演じるようになってからは悪役を演じることを減らしていったそうですが、例えば映画エグゼクティブ・デシジョンのテロリスト役などを思い浮かべた方も少なからずいるのでは?)
原作を脚色した部分としては、ポワロとノートンとの最後の対決シーンが挙げられます。
そして、その対決はノートンに軍配が上がったようです。
結局、ポワロさんはノートンの「心理的殺人教唆」に負けてノートンを殺したとも言えるのであり、それは殺される瞬間に目を覚ましたノートンの姿からも見てとれます。
しかしながら、ポワロさんは自らノートンの最後の犠牲者になることで、ノートンの餌食になる者をこれ以上出さないようにすることはできました。
「自分の行為を正当化しうるのかどうか、私には分かりません。」
ここは原作通りですが、ここで『オリエント急行の殺人』の脚色が生きてきます。
「人には法をねじ曲げる権限はない。」
と断言するポワロさんが法をねじ曲げたあの事件でもロザリオを手にしていましたが、死ぬ間際にもポワロさんは亜硝酸アミルではなくロザリオを手にします。
「裁きを下すのは、神、ただお一人です。」
ポワロさんの手記はほぼ原作通り、このように終わります。
「ああ、ヘイスティングス。
最愛なる友よ。あなたと過ごした時間は本当に楽しかった。
ええ、最高の日々でした。
エルキュール・ポワロ」
こんばんは。
25年間、こちらこそですよねえ。
本当に楽しめた作品でした。
まずあり得ない事ですが、
原作以外のポワロものの映像化を期待したり。
僕もあのシーンは笑いました。
あの状況でなぜ大尉に飲み物を勧めると思うのか?(笑
by コースケ (2014-10-07 21:35)
こんばんは。とうとう終わってしまいましたね。
ここ何作かのもやもや感が吹き飛ぶほどよい出来映え。
何も言うことなしです。
ゆーじあむさんがおっしゃるとおりここに向かって収束してきたことがよくわかりました。
そうそうあのテーブルのシーン。
私も思わず反応。
ヘイステイングにあの行為をさせたのは神以外の何者でもないですよね。
そして笑えたあのシーン以外にもおりおりに出てきたポワロとヘイスティングのやりとりが秀逸でした。
本当にすばらしい時をありがとうと言いたいです。
by あこ (2014-10-07 22:24)
>コースケさん、コメント& nice!ありがとうございます[わはっ]
スーシェさんはリメイクするならABC、みたいなことを少し話したりしていましたけれど、多分作らないでしょうねf^_^;)
有力なのは財団公式の「新作」でしょうけれど。。。
あのシーンはいかにもヘイスティングス大尉らしい(笑)
>あこさん、コメントありがとうございます(^-^)/
そうですよね。ポワロさんとヘイスティングス大尉のやりとり、よかったですよね。
『ビッグ・フォー』の最後でヘイスティングスがポワロ呼び捨てしていたから、今回の吹き替えに少し不安を抱いていたけれど、「ポワロさん」でよかった。
ビッグ・フォーでは感極まった結果だと解釈[じーっ]
テーブルのシーンは丁寧に作っているなあ〜と思いました。
by Yuseum (2014-10-07 23:23)
こんばんは!今日は 思いがけないスーシェさんのツイに ほんとうにびっくり!そして嬉しかったです。
とうとう終わってしまいましたね・・・「カーテン」今日も再度見ました。原作と重ね合わせて見ていました。
ゆうじあむさん ご指摘の鬘の話し、私も同じように感じました。
ミステリーマガジンの熊倉さんのインタビュー、長い台詞・・・というところ、ポワロの手記の読み上げ、長かったですね~。ご高齢の熊倉さんのご苦労なさったのが理解できました。
「ああ、ヘイスティングス。
最愛なる友よ。あなたと過ごした時間は本当に楽しかった。
ええ、最高の日々でした。
エルキュール・ポワロ」のシーンは泣けて、泣けて・・・
Poirot and Meの翻訳本 読みたいです!
もう一度、1話からDVD見ようと思っています。
by jyuki (2014-10-08 00:08)
jyukiさん、コメントありがとうございます(⌒▽⌒)
「最高の日々でした」の部分は、原語で聞いた時にも泣けました[わーん]
熊倉さんは最近細かい字が見えにくいそうで、台本は大きな文字で書かれていたようですから、とても苦労されたと思います。
熊倉さん、お疲れ様ですね。
自分も1話から見返したいところですが、完全版が出るまで我慢しようかと(汗)
by Yuseum (2014-10-08 00:30)
ファイナルシーズンのみしかみていなかった私でも、最後のポワロがヘイスティングスに残したメッセージにじ~んときました。。ちょうど直前に「スタイルズ荘の怪事件」をみることができたので比較するとこのときのポワロとヘイスティングスの役割や関係性の変わらなさがより一層最終回に活かされているんだな~とも感じました!!
CSでもポワロシリーズは放送しているので、私もちょこちょこ見てみようかな~と思います!
(唯一もっていた原作のABC殺人事件は先日読み終えました♪)
それと、HNは違うのですがツイッターをフォローさせて頂きました☆今年の私はやや英ドラマに熱いです(笑)
by 一般市民 (2014-10-12 21:39)
一般市民さん、コメントありがとうございます。
Twitterのフォローもありがとうございます[にこっ]
ポワロ短編は、長編とはまた違った味わいがありますので、是非楽しんでみて下さい♪
自分も英国ドラマに熱いです(^^)
by Yuseum (2014-10-13 17:37)