12年待ちました!〜 M・アリンガム『葬儀屋の次の仕事』〜 [Mystery]
More Work for the Undertakerを読むたびに—それがじつにしばしば読み返したくなる—"この作品以上に溌剌としたミステリはない”と思う。マージェリー・アリンガムはなみはずれて強烈な力(エネルギー)に恵まれている。そのエネルギーが彼女の全作品に、あえて料理本のような言い回しをするなら、「濃厚な味わい」をあたえている。「海外ミステリ名作100選」H・R・F・キーティング、長野きよみ=訳(早川書房)より抜粋
さらに、後期のMore Work for the Undertaker(未訳)では、…(中略)…全体的には信じがたい部分があるとしても、ここに描かれたロンドンの一角—いくつかの通りと、ジョージ王朝時代の建物が立ち並ぶ広場は、あらゆる要素が内包された、完全なひとつの世界となっているのです。思うに、それこそマージェリー・アリンガムならではの特徴—幻想性と現実感の混在する味わいでしょう。『マージェリー・アリンガムを偲んで』アガサ・クリスティ「クリスマスの朝に」マージェリー・アリンガム、猪俣美江子=訳(創元推理文庫)より抜粋
(書影まで掲載されているのだから、本当に出版されるのでしょう。。。)
…ということで、久しぶりにブログを書いてみました
1929年発刊のThe Crime at Black Dudleyに脇役として初登場し、その後、『ミステリー・マイル』で主役となる探偵アルバート・キャンピオンの生みの親として有名です。(後述リスト参照)
(先に引用した、H・R・F・キーティング 「海外ミステリ名作100選―ポオからP・Dジェイムズまで」 において、『霧の中の虎』とともに本作が選出されています。)
2005年といえば、2004年11月に創刊された論創海外ミステリから、 『検屍官の領分』 (論創海外ミステリ7)、 『殺人者の街角』 (論創海外ミステリ20)、 『陶人形の幻影』 (論創海外ミステリ25)と、アリンガムの比較的後期の作品が立て続けに出版されていたので。
当然、『葬儀屋の次の仕事』もすぐに出版されるものと思っていました。
2009年頃になるのでは?という噂を耳にするも、その年の年末になっても出版されず(´・ω・`)(´・ω・`)
2011年に、Twitterで論創社さんに問い合わせる機会があったのですが、その時に、
この時点で、論創社さんにて『葬儀屋の次の仕事』が出版される予定は完全に消えてしまったわけですね。。。
(この時点では、同じように出版予定が流れてしまったナイオ・マーシュDeath and the Dancing Footmanの方が、まだ僅かながらですが、復活する可能性はありました。)
先の『マージェリー・アリンガムを偲んで』の引用は、この短編集Ⅲに収録されたクリスティーの追悼文です。
クリスマスの朝に (キャンピオン氏の事件簿3) (創元推理文庫)
- 作者: マージェリー・アリンガム
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2016/11/30
- メディア: 文庫
ただ、そこからまた音沙汰がなくて、やきもきしていたのですが、2016年の年末に論創社さんから、
そして、2017年には間に合いませんでしたが、今年、論創海外ミステリ206として出版されるのです
(この作品は、先のクリスティーの追悼文においても「彼女の最高傑作」と書かれています。)
そんなにすごく面白かった記憶はないのだけれど、読んでいくうちに何とも表現しがたい味わいがあって。
『クロエへの挽歌』や『屍衣の流行』でも感じた、この味わいを『葬儀屋の次の仕事』にも求めています。
あと、『検屍官の領分』は『反逆者の財布』を読んでから読みたいので、積読中f^_^;
そこで、最後に以下の文章を引用しておきます。
(前略)…作風の変遷があることが、作家像をイメージしづらくしているのである。評価を改めるためには『判事への花束』(1936年。ハヤカワ・ミステリ)、『反逆者の財布』(1941年。創元推理文庫)を新訳で再び世に問う必要があるだろう。家族の問題[新訳]解説杉江松恋ハヤカワ・ミステリマガジンNo.724(2017年9月号)より抜粋
刑事フォイル DVD-BOXが出るよ(その1) [Mystery]
AXNミステリーで字幕版が全シーズン放送され、NHK BSプレミアムでもその半分が吹き替えで放送された刑事フォイル。
そのDVD-BOXが出るようです。
このDVD-BOX2つで全シーズンの半分の話、つまりNHKで吹替放送されている話(シーズン1〜シーズン4)までが収録されているようですが。。。
・・・少々お高いですね
このブログ記事の下に、楽天市場各店のBOX1の価格もいくつか並べてみましたが…(ーー;)
そして、このブログ記事のタイトルに(その1)と書いたのは、まだNHKで放送されていない残りの話(シーズン5〜シーズン9)もそのうち吹替放送されて、DVDも出ることを期待してのことですが…いつになるやら&(価格が)いくらになるやら?(;><)
追記)なお、2019年に残りの話も吹替放送されました
あとは、残りの話のDVD化を待つのみ
でも、拙ブログでも触れたように、刑事フォイルは面白く見応えのある作品です(`・ω・´)!
Yuseumは最初字幕版で視聴したので、吹き替え版を見る前は違和感があるかな?と思ったのですが、確かに声質はオリジナルと違うものの、吹き替え版も素敵でした。
字幕も吹替も味わいたい自分にとっては、今回のDVD-BOXは待望の逸品です
ちなみに、Blu-rayではなくてDVDであるのは、シーズン1〜シーズン7まではSD画質だからだと思います。
(AXNミステリーでは、それらをアップコンバートして放送しているようです。)
なお、アメリカではシーズン4とシーズン5がまとめてシーズン4となっており、全8シーズンと表記されることもありますが、ここではAXNミステリーでの表記に合わせました。
刑事フォイル Foyle's War 〜NHK BSで放送開始〜 [Mystery]
AXNミステリーで今月ファイナル・シーズンまで放映される(後述)「刑事フォイル」。
8/30(日)午後9時からNHK BSプレミアムで放送開始です!
どういうドラマなのかについては、上記リンク先の「番組紹介」に書かれているので重複は避けますが、第二次世界大戦の時代、イギリスのヘイスティングズという小さな町を舞台にしたミステリーです。
(余談ですが、「ヘイスティングズ」と言えば名探偵ポワロのヘイスティングス大尉を思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが、このヘイスティングズという町は11世紀に起きた王位争い「ヘイスティングズの戦い」Battle of Hastingsの舞台であります。
名探偵ポワロ『もの言えぬ証人』にて、ヘイスティングス大尉が「バトラー」というあだ名で呼ばれるのは、実はこの戦いでの戦士(バトラー)と彼の名字を掛けているわけですね。
そして、このヘイスティングズが「刑事フォイル」の舞台であることは意味深いと思われます。)
この「刑事フォイル」、なかなか見応えのある良質の英国ドラマです。
時代設定が設定だけに作品のトーンは決して明るくはありませんが、かといって暗すぎることもない。
歴史的事実を織り交ぜながら、その戦時下で起こる殺人事件や犯罪に立ち向かう主人公フォイル。
その姿は、原題Foyle's Warという言葉通り、まさに「フォイルの戦争」。
時には犯人を追いつめながら、超法規的措置によりフォイルの意に反した結末を迎える事件もあります。
しかしながら、それでもフォイルは自分の正義を貫こうとするのです。
その姿が渋くてカッコイイ。
フォイルだけではない。レギュラー・キャラクターを始めその他の登場人物も魅力的です。
シーズン1第2話『臆病者』では、史上最大の撤退作戦と言われたダンケルクの戦いが織り込まれていますが、、、泣けました(ノД`)
俳優さんについて少し触れると、
フォイルの専属運転手となるサムを演じるハニーサックル・ウィークスさんは、名探偵ポワロの『ひらいたトランプ』のローダ役です。
フォイルの一人息子アンドリューを演じるジュリアン・オヴェンデンさんは、ダウントン・アビー4に出演しているとありますが、名探偵ポワロだと『葬儀を終えて』にも出演(マイケル・シェーン役)。
その他にも、どこかで見たことのある俳優さんが続々登場するので、それを楽しむのも面白いです。
さて。
AXNミステリーでは今月から待望のシーズン6〜ファイナル・シーズンが日本独占初放送されます。
8/3(月)午後8時から放映開始。
そして、8/15(土)からの週末は一挙放送です。 (字幕版)
また、それに合わせて、こんな特集も組まれています。
"I Love Fidelity Dove". ~フィデリティ・ダヴの大仕事~ [Mystery]
読了。
- (a) loyalty; faithfulness
- (b) accuracy; truthfulness